卒業生インタビュープロジェクト第16弾はしょうこさんです。「やりたいことのために生きてる」そう話すしょうこさんは、現在、音楽を中心に活動しています。「決めすぎない」ことを大切にするその姿勢は、こどもの森での経験と深くつながっているそうです。
しょうこさんプロフィール
・ 1996年生まれ
・ こどもの森在籍期間:小学部5年〜6年(2年間)
・ 今の自分の生き方を端的に表す言葉:「一日一日、やりたいことのために生きる」
今の活動と日々の気持ち
ーーまず初めに、簡単な自己紹介をお願いします。
えと、しょうこです。1996年生まれで、子どもの森は小学校5・6年生の2年間通っていました。
ーーありがとうございます。では早速ですが、今の自分の生き方を端的に表す一言、一文をいただいてもいいですか?
わあ、めっちゃむずかしいな……うーん、なんだろ。ぜんぜんわかんないかも(笑)
ーーむずかしいですよね(笑)。じゃあ、インタビューが終わってからでも大丈夫です!では今は何をしていて、どんな気持ちで日々を過ごしていますか?
うーん、職業……まあ、音楽したりはしてます。歌うこともあるし、楽器も弾くし。ただ“活動”っていうほど立派なことではなくて、やりたいことをやってるくらい。気持ちは……とりあえず生きてます。とりあえず生きてますけど、みたいな(笑)
ーーなるほど。今、音楽を続ける中で考えていることや目指していることはありますか?
目指していること……うーん、特にないかも。モットーとかも全然なくて、たいそうなことは考えてないです。本当に、やりたいことをやっているぐらい。
ーーありがとうございます。こどもの森卒業後の進路とかって教えていただけますか?どういう進路を選択して今に至ったのか。
卒業してから中学校は普通の学校に行って、でもあまりしっくりこず、3年間すごし……高校もあんまりしっくりこず。で、高1で転校して、通信の学校に結局行って、高2ではあんまり学校行かずに高卒認定だけとって、とりあえず卒業して、かなあ。
まあでもそのころにちょっとギターを弾いたりとか、中学の時もちょっと合唱団で歌ってみたりはして。なんかでも学校があんまりしっくりこず、べつに嫌じゃなかったけど、やっぱむずいみたいな思いで6年間過ごしつつ、でもその時は結構うまくやってたりしてたかな、っていう感じです。あとは音楽の専門学校に行きましたね。そこからは割と音楽をやってるって感じですね。
ーー音楽をやろうと思ったきっかけとかはありますか?
きっかけはでも、こどもの森にいたときに弾き語りしてみたり、ちょっと発表するみたいな機会もあった。その時に友達と一緒に歌ってみたりして、それが楽しかったのがきっかけになったと思います。
こどもの森との出会い
ーー箕面こどもの森学園についてお伺いします。こどもの森に入学を決めたきっかけは覚えてますか?
そもそも小学校にあんまり行けてなくて。1〜2年生までは行ってたけど、3年生から違和感があって行かなくなったんです。3・4年生のときはずっと家にいたけど、母がずっと家にいるのもよくないと考えてくれて、いろいろ調べてくれたんです。家から1時間くらいで通えるこどもの森を見つけて、体験入学して決めた感じですね。
ーーなるほど。じゃあ、こどもの森に入学してからは毎日学校に行けていたって感じですか?
こどもの森は楽しかったですよ。毎日学校に行けてたし、3・4年生の時に遅れてた漢字も、やってみたら全然問題なくすぐ追いつけたというか、2年間は本当に楽しく過ごしてました。
ーー小学3年生の時に感じていた“違和感”というのは?
机を並べて先生の言うことを聞く、みたいな教育の形に「なんか変だな」って思ってたんです。ずっとそこに座ってるのがいやで、それが違和感でしたね。
ーーこどもの森に入学を決めるうえで悩んだところとかはありますか?
迷ったり悩んだことはなかったと思います。母がどう考えていたのかはわからないのですけど、私は家にいるしかしてなかったから。当時、学校の友達とたまに会ったりしてた記憶はあるけど、まあやっぱ同年代の人たちと会う機会も少なくて。で、こどもの森行ったら気の合う人もすぐいたりで。だから迷いもせずも、すがる思いというか、行くしかないみたいな。
ーーじゃあ3、4年生の時期もほんとは学校に行きたいなと思っていたんですか?
いや、行きたくなかったです。絶対行きたくなかった。何が何でも行きたくないけど、だからって家にずっといるのはよくないと思っていました。
ーーこどもの森で印象に残ってる出来事はありますか?
うーん、絶対あるんだけど……記憶がもう…(笑)あ、でも修学旅行に行ったのは覚えてます。
私が通ってた頃は、まだ「わくわく子ども学校」って名前で、いろんなことがまだ手探りの時期でした。 同い年の子が旅行行きたくない?って言い出して、じゃあ自分たちでお金を工面しようってことになって。みんなでフリーマーケットをして、交通費と宿泊費を計算して、必要な分を集めたんです。高学年は4〜5人しかいなかったけど、みんなで本気でやりました。あれはがんばったなあって思います。
ーーその計画や準備が楽しかったんですね。
そうですね。行き先も電車も宿も、自分たちで全部決めて。
小学生からしたら、夢が広がる感じでしたね。
ーーそういう経験が、今の活動にもつながってると思いますか?
うーん、まあそうかも。ずっとその延長線上でやってる気がします。今も事務所に所属してなくて、全部自分でやってるので。修学旅行の時とやってること自体は変わらない。規模がちょっと大きくなったくらい(笑)
ーー“自分でやる力”は、その頃から培われていたのかもしれないですね。
そうかもしれない。それはあると思います。

ーーこどもの森と他の学校の違いは、どんなところに感じますか?
やっぱり「自分で決められる」ところ。
人に決められて「じゃああなた今日からこれやりましょうね」みたいにただ一方的に流し込まれるかのように教えられるっていうのは違和感があったので、それに比べてこどもの森に行ったら普通の小学校のプログラムではこうなってるっぽいけど、自分で決めた進め方、速度で取り込める。で、そのやり方も漢字の勉強一つにしても、ただ漢字ドリルやるだけがすべてじゃないみたいな。
当時ほんとに漢字がわからないし、わからない以上に自分ができないことへの劣等感が強かったんです。でも体験授業で全部ひらがなで書いてある絵本で自分がわかる字は漢字にしていきましょうみたいなことを提案してもらったりして。漢字ドリルで何回も同じ漢字を書くだけが勉強じゃないんだなって思えたのは良かったと思いますね。
ーー卒業生同士のつながりはありますか?
ほぼないですね。たまーに年に1回くらい連絡取る子がいるくらい。
昔はこどもの森の行事で会ってたけど、ここ十年は会ってないです。
ーー卒業生の“あるある”みたいなのはありますか?
みんなそれぞれやりたいことやってる感じがします(笑)それこそ旅人みたいな人いますよね。やっぱ社会一般的にというか、見てると多くの人が「年取ったら安定しなきゃ」と思ってしまう。でもこどもの森の卒業生は、年とか関係なく海外行こうって思ったら行ってる人もいるし、「こういう風に生きるべきだよ」みたいなルートじゃないことも別に普通になんのためらいもなくやってるみたいなところは、「こどもの森卒業してる人だしなあ」っていう風に思うっていうか。
生き方の転機と今大事にしていること
ーーこれまでの人生で、進路や生き方を決める“転機”はありましたか?
うーん、特にはないかも。転機というより、なるようになって今があるって感じです。
ーーでは、今いちばん大事にしていることは?
いやもう、いろんなことが大事にできなすぎて死にそうですよ(笑)。
でも、「やりたいことのために生きる」っていうのは譲れないです。そうしかできないから。
ーーやりたいことっていうのを大事にするってことですね。これから、自分の人生をどうデザインしていきたいですか?
うわーデザインとか無理!(笑)こっからこうして何年後にこうしてっていうのは無理なので。
でも、生きていきたいし、やりたいことを面白がってやり続けて、その時できることをやる。
ーー将来の目標みたいなものは?
うーん……その時その時、気になるテーマに沿ってやっていく感じです。この3〜4年は本当になるように漂ってきた感じで(笑)でも、新しく巡り合わせで出会う人たちと何かを作っていくのが面白いと思ってる。出会った人との関係から作品ができていく、みたいな。これからはもう少し、自分の意志を持ってテーマを明確にしていってもいいかな、と思ってます。
ーー改めて、自分の生き方を表す一文をお願いします。
やばいねほんと、「漂ってきた」っていうと(笑)でも、決めすぎないことで道の余白を残しておく、っていうのはあるかも。柔軟さを持っていたいというのは憧れかもしれませんが。「一日一日、やりたいことのために生きています」って感じです。

インタビューを終えて・・・

音楽活動を続けながら“その日その日を生きる”というしょうこさんにお話を伺いました。「決めすぎないで生きる」という言葉が印象的で、その一言には力強さとしなやかさの両方が感じられました。何かを“決めること”よりも、“今やりたいことを続けること”を大切にするその姿勢は、こどもの森で育まれた「自分で考えて進む」力の延長線上にあるのだと思います。しょうこさんは、社会の常識や計画に縛られず、出会いや偶然を大切にしながら、自分の感覚で生きておられます。その自由さは決して無責任ではなく、「今を丁寧に生きる」という芯の強さに支えられていました。私自身が受験生であることから、人生の選択にちょうど悩んでいた時期でしたが、お話を聞かせていただき、予定通りでない人生もまた豊かであり、そこにこそ本当の自由があるんだなと感じることができました。
しょうこさん、これからも“漂うように”素敵な音楽と人生を紡いでいってください。
(Y.Y)
