書籍「自分も人も大切にする学校の12カ月: 箕面こどもの森学園の実践から」「はじめに」を公開します。

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2025年10月14日に、箕面こどもの森学園の三冊目の書籍となる

「自分も人も大切にする学校の12カ月: 箕面こどもの森学園の実践から」が発売されることになりました!

こちらのブログでは、「自分も人も大切にする学校の12カ月: 箕面こどもの森学園の実践から」の「はじめに」を公開します。

興味を持ってくださった方は、ぜひ続きを読んでみてください。

箕面こどもの森学園現地では税抜価格の1800円でお求めいただけますので、この機会にぜひ見学もお越しください。

 

はじめに

「あなたは自分を大切にしていますか?」
この問いに、すぐに「はい」と答えられる人は、どれくらいいるでしょうか。
「自分を大切にする」ことの大切さはよく言われるけれど、忙しさや人との関係の中で、つい人を大切にすることを優先してしまったり、どうすればいいのかわからなくなったりすることもあるかもしれません。

今、不登校の子どもは三四万人と言われています。
この数字は、子どもたちが学校という場の中で「自分を大切にする」ことが難しい状況に置かれていることを、静かに語っているのではないでしょうか。

たとえば――
「校則に納得できない」
「なんでみんなと同じことをやらないといけないのか」
「もっと自分のペースで過ごしたい」
「先生が全部決めてしまう」
そんな声にふれる時、子どもたちの中にある「もっと自分を大切にしたい」という思いが、見えてくるように感じます。

しかし「自分を大切にすること」が難しいのは、子どもたちだけではありません。教員の働く環境にも、深刻な問題があります。長時間労働や、休日出勤、持ち帰り仕事。一人ひとりの子どもと丁寧に向き合いたくても、目の前の業務に追われて、心のゆとりが持てない。そんな状況に、葛藤を感じている教員は少なくありません。

「理想の教育」と「現場の現実」の間で揺れながら、教員もまた、自分を大切にすることが難しくなっているのです。

私たち「箕面こどもの森学園」は、「子どもが学びの主人公」「学ぶと生きるをデザインするをテーマに、学校創りを続けてきました。

その中で子どもとの間だけでなく、スタッフ間、保護者との間でも使い続けてきた言葉が「自
分も人も大切にする」です。

大阪・箕面市で約二〇年活動しているオルタナティブスクールで、小中学生とともに、日々の学びを積み重ねてきました。

「こんな学校があったらいいな」
そんな思いから始まったこの学び場では、子どもも大人も「自分の気持ち」や「他者との関係」に向き合いながら、ともに学校を創ってきました。

「よりよい教育とは何か?」ということについて自分たち自身に問い続けた結果、現時点での答えが「自分も人も大切にする」ことを大事にした教育です。

箕面こどもの森学園には、毎年全国から多くの視察者が訪れます。
子どもの進路を探す保護者、オルタナティブスクールを立ち上げたい人、公立学校の中に新しい風を取り入れたい先生たち――その背景はさまざまですが、共通しているのは「今の学校のままでいいのだろうか?」という問いです。

この本では、そんな「自分も人も大切にする」学校のあり方を、その情景も伝わるようにエピソードと解説を交えて紹介していきます。
主人公は「ユウキ」。二六歳の元・公立小学校の教員です。「ユウキ」は真面目な性格で、子どもたちに誠実に向き合おうとする一方、「こうするべき」「こうあるべき」といった、学校に根づく無意識のルールや空気に違和感を抱きながらも、なかなかその枠から抜け出せない、そんな悩みを抱えています。

ユウキは、教員として働く中で、気づいたら疲れてしまっていて、自分の気持ちがわからなくなることもありました。子どもたちに寄り添いたいと思っていたのに、「評価」や「指導」に追われ、どうしたらいいのかわからなくなっていたのです。

「こんな風に教えるのは、本当に子どものためになっているのだろうか?」
「自分はこのまま先生を続けていって、大丈夫なんだろうか?」

そんなモヤモヤを抱えていたユウキが、箕面こどもの森学園と出会い、一年間のインターンシップを経験します。
ユウキの性別は、あえて限定していません。読みながら、「自分だったら」と重ねてもらえたら嬉しいです。

ユウキが出会う子どもたち、スタッフ、日々の出来事――その一つひとつの中に、「自分を
大切にする」「人を大切にする」ためのヒントがあります。

学校を一気に変えることはできなくても、日々の関わりや小さな選択の積み重ねが、学びの場を少しずつ変えていくことはできるはず。この本には、そんな希望を込めました。

教育に関わるすべての人へ。
特に、公立学校やオルタナティブスクールで、よりよい学びの場を創ろうとしているあなたへ。

どうぞ、気軽にページをめくってみてください。
そして、あなたなりの問いや気づきを大切にしながら、「自分も人も大切にする教育」について一緒に考えていけたらと思います。

では、箕面こどもの森学園へ――いってらっしゃい。

2025/10/20に出版記念イベントを実施します!

箕面こどもの森学園を見学して、読書会に参加したい方はこの機会にぜひお申し込みください。

出版記念読書会のお申し込みはこちら