教育カフェマラソン第96回@はっぴーの家ろっけん

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今回の教育カフェは、神戸市長田区にある「はっぴーの家ろっけん」でのスタディツアーでした。各種メディアに何度も取り上げられている有名な場所だけあって、「一度現場を見てみたい!」と願う参加者が集まりました。

【はっぴーの家ろっけんの自己紹介 facebookより】

週に約200人が遊びに来る世界一カオスな多世代型介護付きシェアハウス。マタニティアートから葬儀まで、0歳から100歳overまで出会った人の「はっぴーな暮らしを問い続ける」をモットーに相談業務やってます。空き家・空き地・空きテナントの相談、不動産賃貸・売買・居住支援法人も運営。路線価を上げるがゴールではなく町の暮らしの価値を上げていきたい不動産屋です。

  • はっぴーの家ろっけんがとりあげられているコミュニティームービー『30』

https://30sanmaru.com/

  • 代表首藤義敬さんのTED Talk

https://tedxkobe.com/speaker/speaker0078/

 

いよいよスタディツアースタート

オープニングでお話してくださったのは、ケアマネージャーの岩本さん。「ぜひビールを飲みながら見学してください」とビールサーバーのご紹介から。1階共有スペースの真ん中にビールサーバーが鎮座しており、価格は「入居者とご家族390円」から「えらいひと1000円」まで数段階設定されています。参加者もビールを注文し、なごやかな雰囲気でスタートしました。

スタディツアーの案内をしてくださったのは介護士の沼田さん。

2階から4階まで順番に見学しながらお話を伺います。

各階には個別の居住空間とみんなが集まれる共有スペースがあります。現在入居されているのは40名ほど。希望者多数で待機されている方もいるそうです。この日は2階に入居している方の家族交流会が予定されており、鍋パーティーの準備中でした。

2階に置いてある卓球台は地域の方が寄付してくださったもので、普段から子どもたちが集まってきて卓球を楽しんでいるとのこと。移動時に上った階段の壁には、子どもたちがチョークで書いたと思われる絵や落書きがたくさんあり、なんだか自由でわくわくする雰囲気が全体から漂っています。

 

3階の共有スペースには素敵な写真が飾ってありました。パーキンソン病の写真家さんの作品で、その方を中心にはっぴーの家で写真部が発足したというお話もしてくださいました。

はっぴーの家ろっけんの特徴は、とにかく「人中心」であるということ。システムやアイディアが先にあるのではなく、関わっている人たちがやりたいこと、楽しいと思っていること、大事にしていることを根っこにしていろんな活動を展開していることがわかってきました。

 

 

パネルディスカッションと参加者全員の対話の時間

その後、4階にあがってパネルディスカッションが始まりました。登壇してくださったのははっぴーの家の職員さん、入居者3名(通称ろっけんガールズ)、長田区の職員さん、はっぴーの家に滞在中の看護師さんの6名。「ここに住んでていやなこととかないんですか?我慢していることとか・・・」という質問に「我慢?そんなもんせえへん!言いたいことがあったらすぐ言うから!」と答える入居者のおばあちゃんののびのびした姿に一同爆笑。

パネルディスカッションの後はグループに分かれて対話の時間を持ちました。パネラーのみなさんにもそれぞれのグループに加わっていただき、参加者の感じていることに加え、「自分らしく生きる/死ぬとは?」「コミュニティのあり方とは?」など深いテーマについて考えつつ、終始笑いの絶えない楽しい場となりました。

【お話の一部を紹介】

  • (長田区の職員さん)この場所は10年ほど前、「つながれる空間を作る」という目的で始まった。当時はそういうことをやりたい人がまだ珍しく、首藤さんと出会い仲良くなっていく中でアイディアが具体化し、実現していった。ここの特徴は「無理に混ぜない」ということ。「合わない人」も「全然違う人」もほどよい距離感を保ちつつ場を共有している。多様な人がいることで寛容性が高まっている
  • (ケアマネの岩本さん)介護しているというより、暮らしをサポートしている感覚。「自分の子どもが遊びに来たい場所」にしたいと思っている。子どもたちがここでいろんな人と出会ってどういうふうに成長していくかも楽しみ
  • (入居者のおばあちゃん、90歳でとてもお元気)年を取ったら寂しくて仲間がほしいけれど、子どもの世話にはなりたくない。同じ倒れるにしても「ここにいたらいろんな人がいて、“倒れがい“があるでしょ」
  • (新潟でコミュニティナースをしている看護師さん)今の病院のあり方に違和感を持ち、「自分らしく死ねる」という検索ワードではっぴーの家を探し当てた。自分も地域のコミュニティづくりを目指しており、何度かはっぴーの家を訪問。今も1週間ほどここで寝泊まりしながらはっぴーの家を体験中

他にも・・

  • 小さなトラブルは日々起こるけれど、おおげさにとらえないで笑いに変える。人が集まったら揉め事が起こるのは当たり前。けんかがあったら放っておくこともあるし、その場にいる人が仲裁に入ることもある。コミュニケーションが多くてみんないいたいことを言っているので、大きなトラブルには発展しない
  • ここで働いている人たちは、はっぴーの家の“ファン“の人たち。スタッフどうしでぶつかることもあるけれど、それはこの場のあり方をみんな真剣に考えているから
  • 施設の鍵はかけず、24時間出入り自由。みんなで飲みにいくこともあるし、自宅にいるのと同じ自由がある

コロナ禍でも面会するかどうかは入居者とご家族の判断に任せていたとのこと。コロナに感染するリスクよりも、人と会えなくなることで精神状態が悪化することを懸念した上での選択でした。厳しい面会制限や門限を設定する施設が多い中、はっぴーの家の自由さに魅力を感じて入居を希望する人が激増したそうです。

もう一つ印象に残ったのははっぴーの家での葬儀のあり方です。本人とご家族が希望された場合は、葬儀もはっぴーの家で執り行います。故人が好きだったものにちなんでみんな全力で葬儀の準備をします。「葬儀までやって見送ることができるから、職員の満足度も高いのだと思う」という長田区の職員さんの言葉にも納得しました。他の地域で居場所事業を運営している方からは、「あの人最近来ないなーと思っていると、亡くなっていることがある。お別れがきちんとできないのはとても悲しいし寂しい」というようなお話もあり、「途切れることなく人の最期までトータルで関わっていくことで、残される人たちは満たされるのかもしれない」ということも教えていただきました。

 

スタディツアーを終えて

代表の首藤さんは様々なメディアで「ここがベストとは思っていない。選択肢の一つを作っているだけ」と語っておられます。「多様な選択肢があり、自分らしく生きられる(そして死ぬ)場所を選ぶ自由がある社会」こそが豊かなのではないかと考えさせられました。

はっぴーの家ろっけんは、関わる人が「使命感」ではなく、子どもの頃のように楽しむこと、自然の成り行きに任せることを大事にしている「みんなが自由になれる場所」でした。ビールサーバーも卓球台も、人が集まるしかけの一つ。場が地域に開かれ中にいる人も地域に出かけ、どんどんつながりが広がっていく。あちこちから「自分の地域にもこういう場所がほしい」「自分もこういう場を作りたい」と言う声が聞こえてきました。

 

本当にいろいろなことを感じ考えた教育カフェマラソンでした。温かい場を共に創ってくださった参加者のみなさま、どうもありがとうございました。(K.S)

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https://www.youtube.com/watch?v=bZtpe4XMXaI
【対談】はっぴーの家ろっけん代表:首藤義敬さん②「人に厳しいのは、また会えると思っているから」https://www.youtube.com/watch?v=HZe8mZFx-PE (編集済み)