こどもの森ですごした人たちは今・・・
こどもの森卒業生インタビュープロジェクト第8弾は、現在、看護師として働いているあやさんにお話を伺いました。
*本記事は、卒業生の語りをなるべく忠実に伝えることを大切にしています。そのため、成長の途上にある姿や、まだ言葉になりきらない思いも含めて、等身大の今をそのまま受け止めながら記録しています。
あやさんプロフィール
- 2002年生まれ。看護師 (2025年8月現在)
- こどもの森学園在籍期間:小1の3学期〜小4の1学期
- 今の自分の生き方を表す言葉:興味があることはできる範囲で何でもやってみる
--仕事の後に時間を作ってくださりありがとうございます。興味があることは何でもやってみるということは、挑戦するのが好きなんですね。
挑戦するのが好きって程かどうかはわからないです。社会人で時間があまりないので、できないところもあって、心がけてるまではいかないですけど。ただ、なるべく興味あることはやろうかなっていうふうに思ってます。
--今社会人をされていると伺いましたが、差し支えない範囲で具体的に教えてもらってもよいですか?
あ、全然大丈夫です。今年の4月から美容クリニックの看護師をやっています。
--そうなんですね。どんな気持ちで日々過ごされてますか?
あんまり前向きな内容ではないんですけど。新卒で就職して今二ヶ月目で、覚えることが多くて。もうとにかく目の前のことで、精一杯になりながら毎日がむしゃらにやってます。
--すごく良いことですね。やっぱりがむしゃらにできるときって時間が経つのも早いけど成長するのも早いから、とても良い時期だと思います。
もう同期の子と、しんどいよ、やばいなぁみたいな。そんなことを毎日言いながら仕事行ってます。
--箕面こどもの森学園には、小学校4年生までいらっしゃったってことですけども、箕面こどもの森学園を出た後でどんな進路選択して、今のクリニックで働くことになったんですか?
こどもの森を出たのは引っ越しがきっかけだったんです。そこから公立の小学校に転校しました。その小学校で学級崩壊まではいかなかったんですけど、ちょっとクラスが荒れてた時期があって、1回不登校になって。勉強は苦手だったんですけど、そこで勉強をちょっと頑張って、私立の中学校に入ったんです。
--中学校、高校に入って、看護師になるきっかけはなんだったのですか?
確か大学の看護学部に進むきっかけになったのは、親の勧めが大きかったんです。ちょうど高校三年生の時、コロナで就活がめっちゃ大変そうだと言われている時で、そんな大変な就活を文系の学生が経験するのは無理やなと。とりあえず資格取っといた方がいいかなっていう、なんとも言えへん理由で進路を決めました。
看護学部進んで、学校の実習とかでずっと病院の実習をやってやりがいはあったんですけど、うーん、うまいこと言えないんですけど、なんか違うなと思ってて。普通の病院の選択肢は消えたかなあ。大学三年生の時になんか合同就職説明会に行ったら、今の勤務先のクリニックの先輩方がキラキラしていたのと、もともと美容とか好きだったので、いいなって思ってインターンに行って。そのまま就職の面接受けて、卒業して今に至るっていう感じです。
--じゃあ自分が望んだ道を見つけて、進めているのですね。
そんなことないです。でも多分採用人数めちゃめちゃ多いので、めっちゃ倍率が高いとか全然そんなのじゃないんです。
--私が就職するときには、入ってみなきゃよくわかんないからどこでもいいからなんか入れてくださいよみたいな感じだったんです。自分の将来しっかり考えて働いてるっていうのはすごいなーって思って。
あの毎日、もう怒られながら仕事やってるので、立派なのかどうか分からないですけど。
--あやさんは公立が荒れてたとき、どういったところが苦しかったんですか。
小学校6年生の時は、結構好き嫌い分かれるタイプの担任の先生でした。特にそのクラスの男子たちは、その先生のやり方が本当に気に入らなくて、その先生嫌いすぎて、そのストレスをクラスみんなにぶつけていってどんどん雰囲気悪くなって、という感じでした。私は結構周りと打ち解けたり、うまいことやったりっていうのはもともと苦手で。登校班とかあったんですけど、それもなじめずに自分一人だけ違うルートで帰ったりとか。そういうところが目立ってたのかわからなかったんですけど、それで特に目をつけられるようになっちゃって。それで学校行くのをやめて、家で勉強してたっていう感じでしたね。こどもの森から出た後なんですけど。
--逆に1年生の途中から、こどもの森に入学を決めたのは何がきっかけだったんですか?
小学校1年生の時も学校に行かなくなって、その時親がいろんなフリースクールなどを探してくれて。学校はやることさえやっとけば無理に行かなくていいよっていうタイプの親でした。いろんな学校の見学に行って、その中のひとつがこどもの森やって。体験に行ったんですけど、すごい楽しくて一番同年代の子も多いところだったんです。親には楽しかったから、ここ行きたいみたいなことを言って、それで入学が決まったみたいな感じでしたね。
こどもの森での日々
--そういう楽しかった時間の中で印象に残っている出来事を具体的に紹介してもらえたりしますか?
小学校3年の5月とか6月ぐらいだったと思うんですけど、こどもの森で仲良い友達がいて、遠足で地下鉄に乗ってたんです。その子と喋るのがなんか楽しすぎて、なんか私たちだけお喋りに夢中なあまり、歩くのが遅すぎて、気が付いたらみんなとめちゃめちゃ距離ができてしまってたみたいで、なんかあれみんなおらへんなって。ホーム見たらなんか電車がちょうど扉閉まるとこやって。あ、絶対みんなこれ乗ってるやんみたいな。でもなんか知らへん地下鉄やしどうやって帰るの?ってちょっと私はパニックになったんですけど、その子がめっちゃ電車詳しかった子で、なぜか帰り方知ってたので無事に北千里まで帰ることができました。みほさんとかになんかめちゃめちゃ心配されてどうにか帰ってきた記憶があります。
--そのこどもの森で友達とのエピソードに加え、スタッフとの思い出とかはあったりしますか。
スタッフとの思い出ですか?そうですね。今いらっしゃるかわからないんですけど、田中さんっていう60代ぐらいの女性のスタッフとすごい仲が良くて。小1小2ぐらいだったと思うんですけど、クロスステッチっていう刺繍をして模様を作って、それでクッションを作るっていうのをやってました。結構大きいクッションだったので作るのがすごく大変だったんですけど、なんかそのスタッフとめちゃめちゃ楽しく作らせてもらって今でも覚えてますね。多分家のどこかにまだあると思うんですけど。スタッフとのものづくりがすごく楽しかったです。
--ものづくりは確かに多いですもんね。うちの子はなんか今木工にはまってて。持って帰ってきて家のどこに置くんだ?みたいな作品を量産してます。
あっはっはっは。そうなんですよ。置き場所はすごい困るんですよね。私がいた時も船とか人形の家とか木工で作ってる子いました。今あるかわからないんですけど、今の中等部の校舎があるところに昔、木工室があって、そこで木工してる子が多かったですね。いろんな方が集まって作ったっていう。
--中学部の校舎は卒業生の親と一緒になって作りましょうってなって、できたって聞きました。なんかやる気になったら、何でもできちゃうということを体現しているのが、木工室にしても、中学部にしても面白いところだと感じます。
そうですね。なんか遊具なども手作りで、作ってる生徒がいてすごいなーって思いながら見てました。今あるかわからないんですけど、滑車にロープがぶら下がってて、それ持ってヒューンってする遊具の、めっちゃ小さいバージョンみたいなのが昔あったんですけど、それもスタッフと当時の生徒が共同で作ったと聞いたことあります。
校庭の池も、排水溝引いて、下にビニール引いて、スタッフと当時の生徒が作ったらしいですね。あの辺で鬼ごっこしてて落ちたりとか、昔、その沼の上にめっちゃ細い橋があったんですけど。それ渡るの失敗して落ちるとか。
--池はまだあって、うちの子も落ちたりしてます・・・。
自分で考えて生き方を決めること
--これまでの自分にとって生き方や進路を決める転機だと思うような出来事はありますか?
なんやろ、難しいですね。私は勉強がめちゃくちゃ苦手で、もう本当に。多分1学年か2学年分ぐらい遅れてるのが常みたいな状態で、なんか親も自分もお勉強は諦めて、何かものづくり系の進路行こっか、っていう感じだったんですけど。小学校6年の時に学校行かなくなって、自分勉強できなさすぎてヤバいなぁ、って子どもなりに思って。その学年の勉強をかろうじてついていけるぐらいまで勉強頑張ったら、そこから私立の中学校受かって。多分そこで勉強頑張らなかったら全然違う進路に行ってたのかなって思うので、その不登校の時間に勉強やるかやらなかったかはだいぶ進路に関わってたのかなって思います。
--勉強しないとまずいなーって、思うことは、いろんな人にあるかなって思うのですけど、実際にそこで頑張り続けられたっていうのは、すごいことだと思います。実際行動に移せた、続けられたポイントは何かあったんですか?
親が私に合う塾見つけてくれたりとか、結構周りのサポートがそうさせてくれたので、そこがでかかったなって思います。あと、シンプルに学校の授業が全然わからへん状態で授業6時間聞いてんのが苦痛だったので、中学校入ってからもその状態が続くの嫌やなっていう、それぐらいのモチベーションだった気がします。
--その後、いろんな経験をしていく中でこどもの森学園の経験が自分に与えた影響について教えてもらえますか。
すごい自由な学生生活を送らせてもらったことがあります。進路を選ぶときとか、別に周りに反対されても別に自分がよかったらいいやんって、進路を選べるようになったなっていうふうには思います。
--そんなに大きな影響があったのですね。
そうですね。毎回進路を決める時にだいたい周りに反対されるんですけど、看護学部行ったこと以外は、基本的に自分で決めてたかな。中学校から高校に入るとき、もともとの中高一貫校から別の中高一貫の高校を受験したんですけど、その時に先生から中高一貫で高校からだとなじめへんで、と止められたけど、そこ行きたかったんでそこ行って。大学も新設の学部だったんで、看護師の国家試験の合格率とかも全然載ってないところでした。堅実なのが好きな子だったら絶対やめといたと思うんですけど、自分が勉強したらなんとかなるやんとあんまり考えずに、楽しそうやからいいやみたいな感じで選びました。今の就職先に関しても、最初に看護学部卒業したら病院で臨床経験三年くらい積むのがセオリーと言われてるんですけど、病院が自分に絶対向いてへんやろうし、もう最初から美容行きますって決めるのは自分やしいいやん、って言い続けたら、周りは何も言わなくなりました。
--私は医療の世界を全然知らないのですが、病院と美容関係は、違うのですか?雰囲気とか。
病院は、いわゆる入院している患者さんの看護やったりとか、一般的に知られている看護師さんなんですけど、美容は美容整形のオペ介助や、脱毛をお客さんにやったりで、多分一般的ではないと思います。
--看護は親から勧められたと。その時、看護以外にも考えてたものはありましたか。
えっと、看護以外だったら栄養系か国際系の学部を考えていましたね。栄養系は料理好きだったのと、国際系は英語が当時めっちゃ好きで。留学とかが楽しそうだったからです。
--今は手に職があって、いろいろ世界を飛び回ろうと思えばできそうな感じがします。行ってみたいところはありますか。
円安がマシになるのであれば、オーストラリアに行きたいです。高校の修学旅行で一回行ったんですけど、もう一回行きたいなって思います。確かゴールドコーストっていう街に行った気がします。海沿いの地方の街ですね。あと、イタリアがめちゃめちゃご飯美味しいって親から聞いたのでイタリアに行きたいし、観光だったらイギリスに行きたいです。
--今、あなたは何を大事にして日々を過ごしていますか?
なんやろ。学生生活終わって、親とか、愚痴聞いてくれる同期の子とか、周りの人の存在ってなんかめっちゃ大事やなって、最近思ってて。私は周りの人をめちゃめちゃ大事にできるほど自分に余裕あるわけではないんですけど。まあせめて困ってることとか、自分にできる範囲だったら。恩返しまではいかないですけど、何か返したりして、周りの人を大事にできたらなって思います。周りの人を大事に、自分を大事にというのかな。あと、まあ、社会人になって全然時間ないので、自分が楽しめる趣味とかの時間も大事だなって余計に思いますね。
--休みを取らない人、取れない人は世の中いますよね。私は嫌だってはっきりしているのはいいですね。
絶対無理です。休みはちゃんと取りたいんで。いくらその分のお金もらえても仕事を百パーセントは嫌なんで。
--周りの人を大事にしている中で、これからどんな風に自分の人生をデザインしていきたいですか。
先の人生まであんま細かくはまだ考えてないですけど、大変なこととかあっても自分が楽しかったなって言える人生にしていきたいかなって思ってます。
--私は悩むことが多かったので、今を生きるっていうことを大事にできなかった気がするんです。自分と周りを大事に、今を生きていくバランス感覚を持った、健全な精神を持った人だと思います。今日はお忙しい中時間を割いてくださりありがとうございました。
インタビューを終えて・・・
私は、子どもが生き生きしている箕面こどもの森学園の環境で育った卒業生がどのように大人になっていくのだろう、自分の人生をどのように築いていくのだろう、と興味をもちインタビュープロジェクトに参加しました。今回インタビューを受けてくださった、あやさんは、自分と他人の境界線を持ち、自分を大事にする基盤を持ち続けている人なのだと感じています。
ビデオ通話でのコミュニケーションでしたが、まっすぐな性格、感性が伝わってきて精神的に健康優良な方なのだと強く感じました。自分の人生を生きる上で、世の中の尺度や評価が足枷になることもあると思います。それでも、自分にとって何が大事か、自分が何をすべきか、自分は何ができるかを考えて自律的に行動をとれているあやさんをみて、自分の子どもたちも自分の人生を生きる力を養って成長してほしい、と強く思いました。(K.H)