教育カフェマラソン〜第97回@コムカフェ(箕面市国際交流協会)

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初のコムカフェでの開催

2025年1月11日(土)に第97回教育カフェマラソンを開催しました。今回は箕面こどもの森学園に程近い箕面市国際交流協会(MAFGA: Minoh Association For Global Awareness)のみなさんにご協力いただき、初めて協会が運営するコムカフェでイベントを実施することができました。

コムカフェは外国籍の方々が日替わりでシェフを担当し(=ワンデイシェフ・システム)、世界各国のお料理やスナック、飲み物が楽しめる素敵な空間です。

ワンデイシェフ・システムとは?
ワンデイシェフ・システムとは、登録したプロではない主婦や学生といった人たちが、日替りでランチやカフェメニューを提供する運営システムです。 2001年11月に、三重県四日市市の「こらぼ屋」ではじまりました(コムカフェHPより)。

当日はモンゴルゆかりの特別メニューとして「サジー」のドリンクをご用意いただきました。

酸味があるサジーを蜂蜜とお湯で割った温かいサジードリンク、とてもおいしかったです!

 

 

 

話題提供者はトルガー・エネビシさん

トルガー・エネビシさん

モンゴルの自然豊かな森林地帯の田舎町で生まれ育ち、大学進学のために上京した後、日本へ留学。留学中のホストファミリーとともに大阪でのフィールドワークを経験し、日本の社会問題について学ぶ。大学卒業後はモンゴルで社会的に弱い立場にある人々を支援する団体に就職。2013年再び日本留学を経て、現在は箕面市国際交流協会でコムカフェ事業担当。外国人市民の居場所づくり、コミュニティづくりにたずさわっている。

現在、コムカフェ事業を担当しているエネビシさん。

前半はご自身のライフストーリーを語っていただきました。

少女時代の遊牧民生活体験のお話を伺い、モンゴルの自然豊かな大地でエネビシさんの包み込むような大らかなお人柄が培われたのだろうと感じました。また、エネビシさんが大阪の大学に留学していたときにお世話になっていたというホストファーザーのお話は、参加者のみなさんにとって印象的だったようです。

日本語・日本文化についてモンゴルでも勉強をしてきたエネビシさんですが、「日本のお父さん」は日雇い労働者やホームレスの問題など、日本社会が抱える課題についてエネビシさんが学べるようにと、あちこちにフィールドワークに連れて行ってくださったとのこと。

エネビシさんは、この時の経験が社会的に脆弱な立場におかれやすい人々に関心を持ち続けるきかっけとなり、その後のご自身の活動へつながったと感じているそうです。

 

ホトアイル(家族)の命はひとつ サーハルトアイル(ネットワーク)の意識は一つ

従来、モンゴルの人々は家族とコミュニティをとても大切にしてきました。タイトルの格言はエネビシさんが紹介してくださったものですが、ここにはそうしたモンゴルの文化が反映されています。エネビシさんも地域の助け合いの中で育ちましたが、大学を卒業した2000年頃のモンゴルは大きな社会変化の真っ只中にありました。現在、国土面積のわずか0.3%にあたるウランバートルに人口の45%が集中しているそうですが、都市部への人口流入は地域社会も大きく変えました。

大学卒業後エネビシさんはNGO団体で女性支援等に関わるようになりました。地域の絆が失われ苦しい生活を送る人は増えましたが、人々の中には先の格言に表現されるような「助け合いの気持ち」がまだ残っている、と希望も感じていました。

コムカフェのはじまり

その後、エネビシさんは留学のために再来日し、大学院での研究生活を経て箕面市国際交流協会に就職、現在コムカフェ事業を牽引しておられます。

後半は、2010年に遡って「コムカフェがどうやってスタートしたのか」かというコムカフェの成り立ちから伺いました。

箕面市国際交流協会のHPにもコムカフェの紹介記事があります(2021年5月1日掲載)。

カフェ事業の始まりは 2010 年。2013 年 5 月に多文化交流センターがオープンする 3 年前までさかのぼる。(中略)コムカフェは火曜日から土曜日まで「ワンデイシェフ・システム」のもと、これまで 40 カ国 80 名の外国人シェフが 1 日オーナーになり、のべ 80 名にのぼるボランティアの協力を得ながら世界の家庭料理を提供してきた。

コムカフェの7年間を振り返る

現在はなんと98ヶ国200名ほどのボランティア登録者がいらっしゃるというコムカフェですが、はじまりのきっかけは日本語教室に来ている女性たちの何気ない会話だったそうです。「家でいつもひとりぼっち」「言葉の壁がある」「夫は仕事、子どもは学校。私は仕事がなかなか見つからない」「母国のキャリアが活かせない」など、さまざまな悩みを持つ女性たちが、最初はお互いのお弁当に興味を持つことから始まり、ふるさとの料理をふるまう活動が少しずつ広がっていきました。

食べ物に境界はない

「食べ物は私たちみんなにとって必要なもので、人を心ゆるやかに繋げてくれるもの」と語るエネビシさん。「餃子ひとつとっても、具材に何を包むかがみんな違ったりするけれど似たような作り方をする同じ料理。そういうことを知るのは面白いし人々がつながるきっかけになる」

食べ物は身近で、私たちの生活になくてはならないものです。もちろんそれだけではなく、誰かと一緒に食事をすることでお互いの心が通い合うという体験は誰しも経験したことがあるのでないでしょうか。

コムカフェのシェフのみなさんは、それまで「家族の分しか料理したことがない」という方々ばかりです。コムカフェで初めてたくさんのお客さんにふるまうための調理にチャレンジし、(最初はおそるおそるでも)どんどん工夫を重ねてやりがいを見出すようになります。コムカフェでの活動を通して日本語が上達したり、人とのつながりの中で新たに仕事を見つけたり紹介しあったり。かつては孤独を感じていたけれど活動を通して自尊感情を培い、生き生きと元気を取り戻していった方たちがたくさんいらっしゃるそうです。

 

対話の時間

エネビシさんのお話の後は、参加者の方からのモンゴル土産をみんなでいただきながら対話の時間を楽しみました。

チョコレートでコーティングされたレーズンと牛乳から作られたハードキャンディのようなおやつ

対話のテーマは以下の二つでした。

1. エネビシさんのお話しを聞いての感想&あなたが今までに心動かされ、「今の自己を形成することにつながった」と思うような経験はなんですか?
2. どんなことが自分をとりまくコミュニティをよくすると思いますか?ものの見方、人との関わり方、具体的アクションなどなんでもよいので考えてみてください。

それぞれが自分自身の過去と現在に思いをめぐらし、「これから少しでもコミュニティをよくしていくために何ができるか」について、和やかな雰囲気のもとじっくり深く考え言葉を交わす時間となりました。

 

あるグループの対話メモ

 

参加者からは「みんな繋がりたいと思っている。そのためのコミュニティはゆるい方がいい」「先入観を持たずフラットに見る、心の持ちようが大事」「異文化と出会い自分や自分の国をふりかえることができる」「その人のルーツや文化をアウトプットしてもらうことで、その人が”ここにいる”ことを実感できる」「やっぱり笑顔が大事」などなど、たくさんの意見やアイディアが溢れ出てきて、まだまだ話し足りない様子でした。

 

これからもつながっていきたい

コムカフェは、ふるさとの料理を作る人/食べる人、ともに豊かなストーリーを持つ人々がつながっていくあたたかい空間として、活動を続けています。支援する側/される側という関係性を超えて、お互いが対等な存在として学び合い支え合う場所であるともいえます。このような意義深い活動をされている場所で教育カフェを開催することができて、とても嬉しく思いました。これからもコムカフェのみなさんと共に本音で対話する機会を持っていきたいです。

最後に参加者全員で集合写真をパチリ📷 ご参加くださったみなさま、またご協力いただいた協会スタッフのみなさま、かけがえのない場を共に創ってくださり本当にありがとうございました。