毎年、コクレオの森では会員の皆さまとともに、ビジョン・ミーティングを実施しています。
この中で、私たちはコクレオの森のありたい姿やビジョンを共有し、一人ひとりの活動がコクレオの森全体の活動に効果的に繋がるような調整の場にできたらと願っています。
ここ2年間はコロナ禍によりオンラインによる開催を余儀なくされていましたが、今年は8/12(金)~13(土)の2日間、3年ぶりのリアルで開催することとし、オンラインでの参加もできるようにしました。
また、私たちのビジョンは具体的に実現させていくものでありたいという願いも込めて、名称も「ビジョン実現ミーティング」と変更しました。
その結果、1日目は 26人、2日目は 21人、2日間で延べ 27人の方に参加いただき、私たちが大切にしているこの場を共に味わうことができました。
まずは1日目、参加者のチェックインからスタートです。
自分とコクレオの森の関わりや本日の期待などを自由に話してもらいます。
そして、午前中のワークは、「私とあなたについて深く知ろう」というものです。
4人のチームに分かれ、一人ひとりがこれまでの人生で「嬉しかったこと」「辛かったこと」を語ってもらい、傾聴していた他のメンバーから「その人にとって大切な価値観」「許容できない価値観」について、その人の話から感じられたそのままをフィードバックしてもらいます。
このワークをすると、周囲からのフィードバックを通して自分自身が見えていなかった「大切にしたい価値観」に気づき、「なぜコクレオの森に関わっているのか」、「これからどうしたいのか」など、「自分の心の奥底にある深い思い」への多くの気づきが得られます。
そして、ワークを通して自己開示ができればできるほど、同じ場を共有した人たちとの関係性が、より深く、より強くなるのです。
コクレオの森は、すべての活動において「まずは人と人との関係づくり」から始めており、その重要性を改めて認識できる慈愛に満ちた場になりました。
さて、ここまでは「自分自身や仲間への深い理解」と「関係の質の高まり」という基礎づくりをしてきましたが、その次のステップに進みます。
大切なポイントは、ここで「コクレオの森がやりたいことは何でしょう?」という問いかけまで一足飛びに進まないことだと考えています。
その理由は次のとおりです。
『今の社会は、企業や団体をはじめとする「組織」が中心にあり、その「組織」のやりたいことの実現に向けて、そこに社員や構成員となる「個人」が集まるということが当たり前になってしまっています。
しかしながら、本当にそれでいいのでしょうか?
そうした「組織」が優先される社会のあり方は、多かれ少なかれ「個人」の自己犠牲によって成り立っているのではないでしょうか?
それゆえ、今の日本の社会の中には、「組織」と折り合いをつけられない「個人」がたくさん現れており、それがある一定の限度を超えた場合に、鬱や引きこもり、不登校など、人々は社会と健全に関わることが難しくなってきているように感じられます。
したがって、私たちコクレオの森は、一人ひとりの「個人」の思いの方が優先される「組織」でありたいと願い、また、そんな優しい社会を創るために行動に移していきたいと思っています。』
そこで、次のワークにおいて、私たちは参加者に次の問いかけをすることにしました。
「私(あなた)がコクレオの森でやりたいことは何でしょう?」
この質問は、まずは一人ひとりの「人(=木)」の思いや意志が大切にされ、そんな人々が集まって「集団(=森)」となり、結果としてそれが「組織」としてのコクレオの森の思いや意志でありたいという願いを表しています。
このように、「組織」の思いが優先されるのではなく、「個人」の思いが優先されるあり方を私たちが選び続けるというのは、次の時代の社会を創るうえで、とても大切な価値観になるのではないでしょうか。
この問いかけについてチームに分かれてワークし、一人ひとりがコクレオの森でやりたいことをキーワードとして紙に書き出してもらったところで、午前中は終了しました。
さて、お昼の休憩をはさみ、1日目の午後のワークです。
テーマは、「コクレオの森の存在目的を考えよう」というものです。
私たちコクレオの森が大切にしたい価値観は、一人ひとりの「個人」の思いが起点となり、それを紡いででき上ったものでありたいと考えます。
決して、創立者や理事などトップが考えた理念を押し付けるのではなく、一人ひとりから湧き上がる思いに耳を澄ませ、それを大切にしていきたいものです。
したがって、午前中のワークで紙に書き出してもらった「個人」の思いや願いを、このワークではそのまま使うことにしました。
ここで、次の3つの本質的な問いが投げかけられます。
Why(存在目的、パーパス)
「なぜ、コクレオの森は社会に存在しているのでしょうか?」
「なぜ、私たちはコクレオの森に集まるのでしょうか?」
What
「コクレオの森が社会や顧客に届けている具体的な価値は何でしょうか?」
How
「その価値を私たちはどのような姿勢や思いで届けるのでしょうか?」
一人ひとりの思いを起点にし、コクレオの森のWhy、What、Howを言葉にしてみようという試みです。
まずは、午前中書き出した「個人」の思いや願いが書かれているA4の紙を、床一面に並べてみます。
それらを全員で立ち上がって眺めながら、似たような趣旨の言葉をまとめていきます。
そのようにしてまとまったキーワードをもとに、コクレオの森のWhy、What、Howを考えていきました。
「つながり」「居場所」「共創」「変化」「自分軸」「多様性」「永遠のプロセス」「学び合い」「不完全」「チャレンジ」「ミライを創る」「全肯定」「フラットな関係性」「安全安心」「共感」「民主的なあり方の実験の場」「対話」、「学び場」、「ともに創る」、「主体的な市民が育つ」「境界線をなくす」「市民」「わたしがつくる、みんながつくる」など、コクレオの森で大切にしたい言葉がたくさん出されます。
しかしながら、これらをWhy、What、Howとして短いメッセージにまとめるのは本当に困難を極めました。
言葉のアイディアが出てはみんなで確認し、別の意見や言葉もどんどん出てきてといったプロセスを幾度も幾度も繰り返し、一人ひとりの参加者から湧き上がる思いに耳を傾けます。
これらすべての言葉がコクレオの森を表しているようでもあり、一方で、これらすべての言葉がコクレオの森を表すには足りないようでもあり・・・
参加者の頭は本当に混乱します。
さながらビッグバンの前の宇宙のように、ドロドロとした混沌の場がひたすら続きました。
終わりの時間も近くなった頃、言葉をまとめるヒントとして、次の問いかけもしてみます。
「本日決めようとしている言葉はどんどん変化しても構わないので、現時点でコクレオの森を表す言葉として、最もしっくりくる言葉を考えてみませんか?」
そこで出てきたのは次の言葉たち。
Whyの候補となる言葉
「自分が自分らしくいられる」
「人が再生する場所」
「よりよく生きられる社会」
「ミライを創る」
Whatの候補となる言葉
「学びの場をつくる」
「対話文化を広げる」
「学校をつくる(4つの森は学校)」
「ミライのつくり手を育む学び場」
「ともにつくる人が育つ学び場」
Howの候補となる言葉
「対話」
「共感」
結局、一つの言葉をまとめるまでには至らず、ここで時間切れとなりました。
私たちは、結果そのものが大事なのではなく、一人ひとりがモヤモヤを抱え、本質を考え、みんなで対話を続けていくプロセスそのものがすばらしいと考えます。
本日のワークをもとに、きっと私たち一人ひとりは今後もこの言葉について、問いかけ続けていくのでしょう。
このような中、1日目のワークの最後では、「カオス上等!」という声で閉まりました。
そして、そのまま夜の懇親会に突入し、夜中まで語り明かしました・・・
2日目は、チェックインをしてから、「コクレオの森のKPIを考える」という話題提供を受けて、コクレオの森として大事にしていきたい観点について話し合いました。
改めて、コクレオの森として大切にしたい観点や、届けたい価値をどのようにそれが届いたか確認するかなど話す機会になりました。
その後は参加者からこの場で話し合いたいテーマを募り、以下の内容について関心あるところに分かれて話すことになりました。
最後は全体でチェックアウト。
「コクレオの森のビジョンミーティングのはずだったのに、気づいたら個人のビジョンや在り方を考える機会になっていた」という感想があり、コクレオの森のビジョンミーティングを表しているように感じました。
ビジョンミーティングは今後も1年に1回実施していきます。
コクレオの森のビジョンは固定的なものではなく、進化していくものです。
みんなでつくるビジョンをこれからも大切にしていきたいと思います。
(T.K/T.Y)