毎年、箕面こどもの森学園の卒業式は2部制で行っています。
第1部は「卒業式」。卒業証書や贈る言葉、卒業生からの一言など、スタッフ側が内容を決めて行います。第2部は「卒業を祝う会」。音楽やダンス、クイズやビンゴなど、子どもたちの実行委員会が中心になって行います。
今年は、コロナウィルスの影響から、卒業式と卒業を祝う会ををどうするのかスタッフ会議で話し合うことになりました。
「卒業式をやらないということはさすがに選べないから、会場の人口密度を減らし、換気などを行いながらやろう」ということになり、本来であれば、在校生と在校生の保護者も参加している卒業式を卒業生とその保護者とスタッフのみで行い、卒業式の様子をZOOM配信し、在校生は校内の別室か自宅でZOOM参加、在校生の保護者の方は自宅でのZOOM参加にしようということが決まりました。
続いて、子どもたちの実行委員会が中心になって行う「卒業を祝う会」について話し合われました。
「1部の卒業式は、在校生は別室でZOOM参加しているから、2部は入れ替え制にして、在校生は会場に入って、卒業生の保護者の方が別室でZOOM参加するのは?」
「コロナの影響で特別配慮期間になっていて、練習もあまりできていないから、やらないというのありかな」
「卒業を祝う会の出し物を事前に動画に撮って、会場でその動画を流すというのはどうでしょう?」
などなど、いろんな意見が出る中で、あるスタッフから、こんな発言がありました。
「そもそも、卒業を祝う会は子どもたちが企画しているものですよね。いくらコロナウィルスのことがあるからって、スタッフ会議でやり方を決めてしまうのって、どうかと思うんですけど…」
その言葉で、卒業を祝う会についていろいろ話し合っていたスタッフ会議の空気が、一瞬にして変わりました。卒業を祝う会は、子どもたちが企画するイベントだから、子どもたちが話し合って決めたらいいということにスタッフ全員が気づき、子どもたちに、コロナウィルスのこともきちんと説明して、スタッフ会議で出たことは案として伝えて、その上でどうするのかを決めてもらおうということになりました。
コロナウィルスの影響で、学校への登校は特別配慮期間となっていて、3分の1ぐらいの人は登校せずに自宅学習を選んでいます。そのような状況の中、卒業を祝う会の実行委員の子どもたちに、「卒業を祝う会をどうするのかを実行委員会で話し合って決めてもらいたいので、この日程で集まれる人は学校に来てほしい」と連絡をしたところ、その日は、ほとんどの実行委員のメンバーが登校して、話し合いに参加してくれました。
そして、驚くべきことに、その話し合いで、子どもたちが決めた卒業を祝う会のやり方は、卒業生とその保護者のことを一番大切に考えた内容で、スタッフ会議での話し合いを遥かに越えたものだったのです。
・会場の人口密度から、会場で参加できるのは、卒業生とその保護者と、役割のある在校生とスタッフとする。役割のない在校生とスタッフは、別室でZOOM参加。
・出し物がある人は、自分の出し物の前には、部屋の入り口でスタンバイしておいて、自分の出し物が終わったら、別室に戻る。
この実行委員会の決定に、文句をいう在校生は一人もなく、「コロナウィルスの対策をしながらも、卒業生のその保護者の方を精一杯お祝いできる方法」として受け入れられ、当日は、このやり方で卒業を祝う会が行われました。
コロナウィルスの広がりを受けて、子どもたちの生活も大きな影響を受けています。
しかも、ほとんどのコロナ対策は、大人たちが決めたもので、子どもたちが意見を求められることはほとんどありません。
けれども、コロナウィルスのリスクをきっちり伝えた上で、自分はどう考えるのか、自分たちはどうしていきたいのかをていねいに話し合える場があれば、子どもであっても、自分の心で感じ、自分の頭で考えて、自分たちが納得のいく、大人が思いつきもしないすてきな方法を見出すことができる。
改めて、子どもたちが持つ可能性と、子どもたちから学ぶことの大切さに気付かされるとともに、民主的に生きるとは、こういうプロセスを大切にすることなのだと思いました。
今回、卒業を祝う会実行委員会のみんなが出してくれた答えには、本当に感動したし、とてもうれしかったです。コロナウィルスの影響で、例年より会場の人数は少ない卒業式と卒業を祝う会になりましたが、あたたかい気持ちが例年と変わらず、あるいはそれ以上に溢れた卒業式と卒業を祝う会になったと思います。
卒業式と卒業を祝う会の詳細については、こちらのブログをご覧ください。(藤田 美保)