卒業生インタビュープロジェクト始動!vol.1【ゆいちゃん】

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こどもの森ですごした人たちは今・・・

箕面こどもの森学園は、今年で創立21年となります。こどもの森に過去在籍していた人たちも、どんどん成長して社会に羽ばたいていっています。

かれらはこどもの森のビジョンである「”わたし”を生きる」を現在進行形で体現している存在です。変化の激しい今の時代、新しい生き方を探り自分なりの道を切り開いていっている卒業生や過去在籍者の姿を記録することは、こどもの森に今通う子どもたち、保護者のみなさん、スタッフはもちろん、より広い日本社会全体にとって大きな示唆と希望をもたらしてくれるのではないでしょうか。そんな思いで、こどもの森スタッフと保護者共同で卒業生インタビュープロジェクトをこのたび立ち上げました。卒業生はもちろん、短期間でも在籍経験のある、現在高校生以上のみなさんにインタビューをしていきたいと考えています。

初回は、現役高校生のゆいちゃんにお話しを伺いました。

ゆいちゃんはこのプロジェクトが立ち上がる直前に「なんらかの形でこどもの森にまた関わりたい」と学校に連絡をくださいました。そこで、本プロジェクトに参加してもらうと同時にインタビュー回答者第一号になっていただいたという経緯があります。

ゆいちゃんプロフィール

  • 2007年生まれ、17歳。大阪女学院高校 国際バカロレア(IB)コース 3年生(2025年5月現在)
  • こどもの森在籍期間:小3〜小4途中まで(2016-2017)
  • 今の自分を生き方を表す言葉:「いろんなことに挑戦しつづける。大人になるまでにいっぱい失敗しておきたい」

 

ーー今の自分の生き方を端的に表す言葉や一文って今思いつきますか?

一文でっていうのむずいんですけど、なるべくいろんなことに挑戦しようと思ってはいます。やっぱりまだ子どもなんで、大人になるまでにいっぱい失敗しときたいなと思ってます。本当にチャレンジ精神がない子どもだったんで、今のうちに頑張っていろんなことに挑戦して、いっぱい失敗して成長していきたいなっていうふうに。

ーー今何をしていて、どんな気持ちで日々を過ごしてますか ?

今は高校で国際バカロレアっていう IB の資格を取るために、普段の授業ではディスカッションだったりとかプレゼンとかそういうアウトプットが多い授業っていうのを通して学んでいます。最終テストの1個前のプレテストみたいなのが1ヶ月後ぐらいにあって、それで大学が決まるので不安と緊張がでかいですね。

ーーこどもの森に1年半ぐらい通った後っていうのはどういう進路を選択して今に至ったのか教えてください。

小5、小6は普通の地元っていうか、近くの公立の小学校に行ってて、その時は楽しく過ごしてたんですけど。

元々中学受験をしたいなっていう風に思ってたんですけど本当に勉強が嫌いで。英語が得意だったので、それで行けるところで。プラス女子校にちょっと憧れがあって女子校に行きたいなっていうので、今の大阪女学院を選んで中学受験しました。

 (今通っている)IBに入ろうと思ったのは、やっぱり中学でも勉強が嫌いで・・こどもの森の頃に比べて全然なんか勉強ってか好奇心が本当になくなってたっていうか。カリカリ授業を受けて暗記してテストに挑むっていうのが本当に多分合ってなくて、ある程度成績は取ってたんですけど、でもやっぱり好きじゃないっていうか、「勉強することが楽しくないな」って思ってしまってたところに、担任の先生が「 IB いいよ」っていう風にお勧めしてくれて、頑張って成績を取ってなんとか入れて、今はすごい楽しく勉強できてます。

ーーなんで英語は元々得意だったの?

お父さんが帰国子女で、母親が「私に英語を教えないといけない」っていうのが多分あったみたいで。ちっちゃい時から結構英語のアニメみたいなのとかを見せてもらったり、聞かせてもらったりとかしたり、あとおじいちゃんがカナダに住んでて。何回か留学も行ったりとかして、そういうので自然となんか、ま、勉強したってよりも自然と英語力がついてたみたいな感じです。

こどもの森との出会い

ーーこどもの森に入学を決めたのはなぜですか? いつ頃決めたのか、なぜ志望したのか、決めて重視したポイントは何ですか?

小学校2年生の時にカナダに3ヶ月ほど行って。自分のおじいちゃんが住んでるところの近くの小学校に行ったんですけど、そこでの勉強が本当に日本と全然違ってて。ちょっと IB に近くて話し合ったりとか、「森で自然を学ぼう」みたいなそういうのが多かったりとかして。「こういう教育法もあるんだ」っていう風に私も両親も気づいて。

で、そこで私元々本当に勉強が嫌いだったので「もっといいところがあるんじゃないか」みたいな風になって、(こどもの森を)見つけてくれて。で、見学に行って超楽しくて入っちゃった。

ーー誰が見つけてくれたの?

多分お母さんが見つけてくれましたね。

ーーお母さん、どうやって見つけたんだろう?

覚えてないんですけど・・・。すごい(こどもの森関連の)本とかもいっぱい読んでた。こどもの森のこと結構調べてくれてお勧めしてくれたのかもしれないですけど。

ーー引っ越してまでっていうのはかなり大きな決断ですよね、家族にとって。

(当時住んでいた大阪市内から)多分1時間半ぐらい電車でかかっちゃってたので、それが不安だったのかな。小学生だったんで。それで移住しました。

ーー体験は1週間くらい通ったのかな?

1週間だったかは覚えてないんですけど、数日通ったのは覚えてます。(体験では)プロジェクトとかそういうのが楽しかった。あと多分雰囲気がすごい好きだった。こぢんまりとした家になんかわちゃわちゃ学年問わずで遊べるっていうか、学べるっていうか、そういうのが楽しかったっていうの覚えてますねすごいフレンドリーで、他の子が私が入った時「オセロしよう」って誘ってくれて。なんかそう、すごく楽しかったな。

ーー入学したい、となった時に、家族とはどういう話し合いをしたかとかは覚えてますか ?

私っていうよりもなんかお父さんとお母さんがすごい話し合ってた気がします。私は入りたかったんで。見学行って楽しくて仕方なかったんで、もうただ「入りたい、入りたい」って言ってて。お父さんとお母さんは「ほんまにいいのかな」っていう風に。多分新しい、かれらは知らない教育法だったんで、ちょっと不安もあったみたいで色々話し合っていたと思うんですけど。

こどもの森で培った教育とアートへの関心

ーー今回ゆいちゃんが高校3年生になって、またこどもの森に関わりたいって思ったのがすごく面白いなって感じているんだけど・・・心境の変化というか、どうしてこどもの森にまた関わろうと思ったのか教えてもらっていいですか。

中学の時までは何にも考えてなかったんですけど、高校に入ってから進路を考える時に「自分の興味のある分野は何やろう」っていう風に考えた時に出てきたのが、教育とアートだったんですよ。で、志望理由とかを書く時に自分の過去をたどるじゃないですか。そしたらどっちもやっぱりこどもの森の存在がでかいなと思って、1年半しか行ってないのに。

ちっちゃい頃から教育に興味があったっていうか、「学校って面白いな」みたいな風に思ってて、カナダ留学とかもあるんですけど、本当に「教育の幅って広いんやな」っていう風に感動したのがこどもの森がきっかけだったんで。教育者や保護者の方、卒業生と会話できたりする機会ってやっぱりなかなかないと思うんで、(今回の)プロジェクトに参加したいなって思ったんですけど。

「こどもの森やったら受け入れてくれそう」っていうか。教育に興味あったんですけど実践的な何かっていうのがあんまできてなかった。調べたりとか本読んだりとかそういうことしかできてなかったんで、直接現場に行ってみたいなっていうのがあって。それでこどもの森なら受け入れてくれるかもしれないと思ってダメ元で問い合わせてみたっていう感じです。

こどもの森で過ごした日々

ーーこどもの森で印象に残ってる出来事、日常のエピソードとか友達やスタッフとの会話とかイベントとかありますか?

印象に残ってる出来事ってよりも、プロジェクトの時間があったことでものを作るのが好きになって。もう本当に深夜までずっと作ってたのを覚えてます。

ーーんなものを作ってたの?

絵を描いたりってよりも、自動販売機・・・ダンボールで自動販売機を作ったりとか、工作系。ガチャとか UFO キャッチャーとか、弟のおもちゃだったりとか、そういうのを作るのにものすごくはまってて。そこですごいアイディア力とか創造力っていうのがついたなっていう風に思います。

それで、勉強が本当嫌いだったんで、その・・・算数の時間とかもあったじゃないですか。

ーーことば・かず?

あ、そうそうそう。それで「嫌いだ」っていうのを相談したらちゃんとなんかすごい真摯に話を聞いてくれて。「じゃ、こういう風な勉強法したらいいんじゃないか」みたいな感じで問題集をやった方がいい問題とそうでない問題を識別してくれたりとか。そういうのしてくれたのもすごい印象的。ほんと1人1人に向き合ってくれてるんやなって思ったから。

あとなんか近くの森みたいなところ、千里北公園の木がすごい生い茂っているところで定期的に鬼ごっこみたいなのをしていたのが印象的に残ってる。

確かその前半の方はすごい楽しかったんですけど、小学4年生ぐらいになってから友達といろいろトラブルがあってその時にそれが嫌で転校しちゃったっていうのがあるんですけど。すごくいい思い出があったんですけど、たまたまその子たちと合わなかったっていうか、すれ違いがあったのかな。少人数なんで1回揉めたらずっと気まずいじゃないですか。私も未熟だったんで。

再び公立小学校に通って感じたこと

ーー元々公立の小学校経験してるからそんなにカルチャーショックみたいなのはなかったかもしれないんですけど、小4の途中でまた公立小学校に行った時ってどんな感じだった ?

いや、もうめちゃめちゃカルチャーショックでした。ショックでした・・というか、「教育はもっと自由なんだよ」みたいな。「私は特別なんだ!」みたいなちょっとそういう考えがあって・・・。みんなで「前へならえ」をしないといけないとか、「同じ服を着ないといけない」とかそういうことにすごい違和感があってずっと反発してましたね。先生に「それは必要ないと思います」って 言ってました。先生とか、お母さんとかに。

ーーお母さんや先生はどういう反応だったの?

お母さんは普通の公立の小学校(出身)だったんで「そっか〜」みたいなそっかみたいな感じだったんですけど、先生は結構ちゃんと取り合ってくれた。結構いい学校で、そこもちゃんとそういう校則になった理由だったりとかも話してくれたり。すごくいい先生でした。でもほんまに違和感があったっていうか、「なんでみんな当たり前のようにそんなことしてんの?」みたいな。それをずっと思ってて・・・。でもめちゃ楽しかったです。

高校生活の様子

ーー今は?大阪女学院は校則は厳しくないの?

だいぶゆるい方ではありますけど、歴史が長い学校なので昔からあるよくわからないルールみたいなのがちょくちょくあって。靴下の色の制限だったりとかそういう系のがあって。私それでちょっと生意気な生徒なんですけど、クラスメートと決託して「校則見直し委員」みたいなのを立ち上げて。ルールとかそういうので違和感があるものを見直そうっていう委員会みたいなのを立ち上げて、色々活動しましたね

先生に直接直談判っていうか、「なんでこういうルールがあるんですか」とか聞きに行って直したいところや自分たちの考えとかも伝えたりとかして。一部の意味わからない校則はなくしたりもできました。

ーーこれまでの自分にとって生き方をや進路を決める転機と思うような出来事はありましたか?

IB に入ったのはでかいなって思う。中学で志望して条件が合えば入れる。勉強の仕方が普通の教育と全然違って、例えば文学だったら本を分析していくんですけど、本を2つ比較して、グローバル・イシューを取り上げて、それがどのようにこの本の中で表現されてるかとか、そういう文学作品を深掘るみたいな感じで。最終的なファイナルテストでは論文みたいなのを書いたりとか。だから古典だったり漢字だったりそういうことは全然やらなくて文学っていうのを追求していくみたいな感じのカリキュラムだったり、そういう感じです。

全部の科目で、ま、色々あるんですけど、歴史だったら「何年にこういうことが起こった」とか覚えるんじゃなくて、独裁者2人を取り上げて比較するだったりとか、特定の分野、内戦だったりとか独裁者だったりとか、プロパガンダだったりとか、そういうトピックを取り上げてそれを比較したりとか、それについて論じるっていう。そう、ファイナルテストがあって、それに向けての対策だったりとかそういうのが多いです。

ーー今改めて振り返ってみて、こどもの森での経験が自分にどのような影響を考えていますか ? また実際にこどもの森に在籍して いた当時はどのように感じていましたか ? 今まで話したことと被るとは思うんですけど。

こどもの森では教育者に対して、すごいいいイメージを持った。すごい向き合ってくれる。1番最初の1,2年生の時に行ってた小学校はめちゃめちゃ人数が多くて、先生も子どもの名前覚えてんのかなっていうぐらいな感じだったんで。(こどもの森ではスタッフが子どもに)すごい向き合ってくれて教育を楽しんでて、子どもたちが好きで・・・みたいなのがすごい伝わってきて、スタッフも子どもも一緒になって楽しんで学校を作ってるなっていうのがあって、それがやっぱり今の教育のイメージに繋がってるなって思います

ーー実際にこどもの森に在籍していた時もそう思っていた?

そこまで具体的には思ってなかったんですけど、スタッフも楽しそうで私たちも楽しくて「なんて素敵なところなの」って思ってました。

ーー転校したのが7年前で、7年間なんとなく胸の中にこどもの森のことが・・・

そうですね、いや、本当に(影響が)大きいと思います。私の「物を作るのが好き」とか「創作アートが好き」っていうのが、絶対こどもの森から(の影響)なんで、それまで全然絵を描くのとかも好きじゃなかったし、物を作るのも好きじゃなかったし・・・なので、その個性を伸ばしてくれるっていうのがすごいありがたかった。今も感謝してるっていうか、行ってよかったなっていう風に思ってます

ーー今はどんなものを作ったりやったりするのが好きなんですか?

今は絵を書くのが好きで絵を描いたり、あと友達と今ゲームを作ったりしてるんですけど、 RPG 系のゲームを簡単に作れるアプリみたいなのがあって、そこで音楽担当の子、 絵担当の子、物語担当の子と、みたいな感じで協力して作ってます。

今何を大事にしていて、これからどんなふうに自分の人生をデザインしていきたいか

ーー今ゆいちゃんは何を大事にしていて、これからどんな風に自分の人生をデザインしていきたいですか?

そうですね、挑戦することもそうなんですけど、人との関わりとかも大事にしたいなって思ってて、私中学の頃すごいひねくれてて、好きな人としか絡まないし、嫌いな人は嫌いだしみたいな風に思ってたんですけど、話したらなんかわかるなっていうことが・・・。

IBでやっぱ「合わないな」って感じた子もいたんですよ、最初。でも対話をいっぱい重ねる授業なんで、そういうところでかれらが本当は何を考えてるのかとか分かってきて、それは自分の価値観の見直しだったり自分の学びにもつがるし、相手を理解できて繋がりができて視野が広がって・・・みたいなのをすごい感じるので、人との繋がり大事やなって思ってます。大学でもいろんなことにチャレンジして交流関係の幅を広げていきたいなっていう風に思ってます。

ーー話しを聞いてきて、 IB で対話を重ねたことっていうのと、こどもの森在籍時に小さいながらに対話をしたりとか、自分自身が何をしたいのかを追求したことっていうのが線で繋がったのかなって思いました。

そうですね、「問題やな」って思うことにちゃんと「問題です。これは」っていう風に言えるようになったのもこどもの森の経験が大きいなって思いますし、ちょっと世界が広がるだけで今の状況に違和感を持てるので。IBもそうですけど、こどもの森(の影響)もすごい大きかった。「勉強のこういうやり方が嫌いなんだ」って伝えたらちゃんと向き合ってくれて解決しようとしてくれるスタッフがいるっていうのが、すごい良かったです。

ーーなんかめっちゃあったかい気持ちになった。ありがとうございます。

私も(笑)。(これからも)行動していこうって思います。

 

インタビューを終えて・・・

今回のインタビューは低学年スタッフのしきたん(敷田佳子)が担当させていただきました。一番印象的だったのは、ゆいちゃんが「大人になるまでにいっぱい失敗したい」「問題だと思うことを摘できるようになった」と語っていたことです。これは自分や社会に対して絶対的な安心と信頼を感じていないと持てない感覚だと思います。在籍していたのは1年半という限られた期間ですが、こどもの森での経験がゆいちゃんの「人としてのゆるぎない土台」を形成するのに大きな影響を与えたんだなあと胸がいっぱいになりました。

私はこどもの森に関わってまだ2年半ほどですが、子どもたちとの関わりで「自分の対応はあれでよかったのか」と迷うことがたくさんあり、悩みは尽きません。何かあるたびにスタッフどうしでたくさん話し合います。

これまで20年以上の間、こどもの森のスタッフは皆、「決して完璧ではないけれど、一人の対等な人間として精一杯子どもたちに向き合いたい」と考え、たくさんの対話を重ね、子どもたちと懸命に関わり続けてきたのだろうと思います。今回、ゆいちゃんのお話しを聞いて「こどもの森が大切にしていることは子どもたちの心のとても深いところに届いているのだ」と感じることができました。

いちゃん、貴重なお話しをありがとうございました。