こどもの森ですごした人たちは今・・・
こどもの森卒業生インタビュープロジェクト第12弾は、現在、SNSマーケターとして活躍中のちほさんにお話を伺いました。
*本記事は、卒業生の語りをなるべく忠実に伝えることを大切にしています。そのため、成長の途中にある姿や、まだ言葉になりきらない思いも含めて、等身大の今をそのまま受け止めながら記録しています。
ちほさんプロフィール
・2002年生まれ(23歳)。SNSマーケター(2025年10月現在)
・こどもの森学園在籍期間:中学部1〜3年
・今の自分の生き方を表す言葉:「継続」

現在の活動と仕事の始まり
ーーこどもの森スタッフから「中学校の時から個展とか開いてる子なのよ」っていう情報だけはもらったんですけど、簡単に自己紹介お願いしていいですか。
はじめまして。今は個人事業主でSNSマーケターをやっています。主に50代の方に、インスタの運用やインスタからの集客を教えています。
総フォロワー数22万人のアカウントの裏方としてインスタの運用をしています。
高校を卒業して特に行きたい大学がなく、「これからどうしようかな~?」と思っているときに母から「やることないんだったら私の仕事を手伝って」と言われたのがきっかけです。やってみたらしっくりきて、そのまま続けてるって感じです。
今の暮らしと大切にしていること
ーーSNSマーケターなんて、すごいですね!今は生活の中で、どんな気持ちで日々過ごしていますか。
楽しいなと思います。継続しながら改善していって結果が出るところが楽しいですね。自分の思い通りにうまくいったときも楽しいですし、教えている方たちが結果を出したときは本当に嬉しいです。
今の生き方を表す言葉は「継続」です。コツコツやることが好きで、苦にならないんです。「幸福」という感じに近いかもしれません。
こどもの森で得た気づきと学び
ーーこどもの森での経験が、今の自分にどんな影響を与えていますか?
小さい頃から絵を描いたり、ブロックを作ったりするのが好きでした。こどもの森に行って、「自分は絵を描くことやものを作ることが好きなんじゃなくて、“何かを作り出すこと”が好きなんだ」と気づいたんです。コツコツできれば楽しいということに気づきました。
自分でいろいろ考えて行動する時間が多くて、その中で「自分はこういうのが好きなんだな」と分かりました。
ーーそれに気づく人って少ないと思う。他にこどもの森を振り返って、大事だったなと思うことはありますか?
こどもの森で大事だったなと思うことは、自分で計画を立てて、それを実行することです。こどもの森を卒業して、通信制高校を選んだ理由も、こどもの森のように自分で計画を立てて進めるスタイルが合っていたからです。通信制は自分をコントロールしないと難しいけど、私は着々と進めていました。
ーーなるほど。こどもの森で印象に残っている日常のエピソードはありますか?
そうですね。ある放課後、大人がいない時間に、ある子が怒ってテーブルをひっくり返したことがありました。そのとき「大丈夫?」と声をかける子、見守る子、「自分で片付けろよ」と言う子、いろんな子がいて、すごく面白かったんです。個性が際立っていて印象に残っています。
話し合いの時間では、あまり手を挙げて発表するタイプではなくて、客観的に「その人はこういう見方をしてるんだ」と観察していました。
卒業してからの進路
ーー中学3年間こどもの森ですごして、その後の進路は?
高校は東京インターハイスクールという通信制のインターナショナルスクールで、奈良から片道1時間半かけて通っていました。
高校を卒業してから大学には行かず、いろいろ調べたんですけど行きたいところがなくて、「もういいかな」と思いました。自然な流れで母の仕事を手伝うようになりました。
こどもの森という場所
ーーちほさんにとってこどもの森ってどんな存在でしたか?
私にとってこどもの森は、自分の「好き」を追い続けられた場所です。おうちの絵をいっぱい描いたり、ものづくりのプロジェクトに取り組んだりしていました。ちょうど「個展をしたい」と思っていたタイミングでその機会がありました。

ちほさんがプロジェクトで作成した「異次元ハウス」
転機と体のSOS
ーー23年間を振り返って、あれはターニングポイントだったなと思う出来事はありましたか?
そうですね。小学校1年生から嫌々学校に通っていて、3年生のときにいきなり歩けなくなったことがありました。足が痛くて、かかとに体重を乗せると痛かったんです。検査をしても異常がなくて、学校を少し休んでいる間に、いつの間にか治っていました。
そのとき、「体がSOSを出してるんだ」と思いました。そこから公立に4年間通いましたが、「公立の中学校に行くのはもう無理かな」と。
それ以降、体からのSOSは出てないですね。休みたい時は休むようにしています。
今、大切にしていることと、これから
ーーちほちゃんが今、一番大切にしていることって何ですか?
今一番大事にしていることは、やっぱり「続けること」です。仕事だけでなく、すべてにおいて。いろんな人を見てて、続けないと何も形にならないかなと思ったので。
自分が貢献できることで人の役に立ちたいです。今の仕事でも、教えている方たちが結果を出すと嬉しくて。その瞬間に「自分のやっていることは意味がある」と思えます。
こどもの森方式が今の仕事に活きている
ーーこどもの森での学びが今に生きていることってありますか。
はい。学習の進め方はすごく役立っています。教えるとき、大人でも自分で自主的に進められない人が多いので、こどもの森方式で「自分で計画を立てて進めてもらう」スタイルを取り入れています。
ーースタッフがコメントがしてくれるのって嬉しいですよね。
そうですね。
ーー今日は貴重なお時間を取ってくれてありがとうございました。
インタビューを終えて・・・
今回インタビューを受けてくださったちほさんの言葉には、経験を通して自分と向き合い、考えを丁寧に紡いできた人ならではの深みがありました。
中学生の時に「成果よりもプロセスを楽しむこと」の大切さに気づいたという学びは、こどもの森での日々そのものが教えてくれたものだったのかもしれません。その気づきを軸に、今の仕事や生き方へと自然に結びつけている姿からは、与えられたものではない本物の学びが、人生の中でどのように息づいていくのかを静かに教えられたように感じました。
「続ける」というシンプルな言葉の裏には、何よりも自分を信じて積み重ねてきた時間があります。その姿勢はまさに、こどもの森で育まれた“自分で考え、自分で選び、自分のペースで歩む力”の表れだと思いました。
学びとは、誰かに与えられるものではなく、自分の中に芽生え、育てていくもの――そのことをちほさんの語りから改めて実感しました。
私はこのインタビューを通して、保護者として子どもたちが夢中になっていることも、迷いながら挑戦していることも、すべてが尊い時間であることを改めて感じました。
結果よりも「やってみよう」と思える気持ちを大切にすること。そして、その気持ちを信じて、そっと見守ること。その繰り返しが、やがて子どもたちの中に「自分の力で生きていくための根っこ」を育てていくのだと思います。子どもたちが日々挑戦を重ねる姿や、迷いながらも自分の道を探していく過程に寄り添いながら、私自身もまた、一緒に学び、育ち続けていきたいと思います。(こどもの森小学部保護者 中泉あゆみ)

