第19回教育カフェ・マラソン~石井 美保さん


今回は、人類学を研究されている京都大学人文科学研究所の石井美保准教授をお招きしました。
はじめの40分ほど、石井さんに話題提供をしていただきました。
< テーマ >
  ここではない世界をひらく力 ~ 人類学が子どもとともにできること
< キーワード >
子どもがもつ、『越境力』 越えるもの : いま(時間)とここ(場所)
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● 人類学の中の子ども ~「越境者」としての子どもたち
子どもが、どのようにして異なる世界(「日本と海外」「日常と非日常」という2つの世界)を、行き来するか、そして子どもの役割についてのお話がありました。
その中で興味深い言葉に、「日常の裂け目」があります。少しわかりにくいですが、裂け目という表現で、日常には内側と外側があることを表しています。

● 私のフィールドワーク(ガーナ、南インド)と子どもたち
石井さんのガーナと南インドの異なる場所におけるフィールドワークを通して、子どもがどのように生活しているのか、お話がありました。
(ガーナ)「子どもと大人の関係」や「子どもと人類学者の関係」がどのようなものであるか
(南インド)石井さんのお子さんと、言葉では通じあえない現地の子どもとのコミュニケーションについて

● 学校と「日常」の擁護をめぐる問題
ここでは、学校で起こった子どもの死という事故に対する、学校や大人の行動と、子どもの行動について、3つのポイントを中心にお話がありました。
・学校のもつ「元に戻ろうとする力」の強さとその問題
・子どもの感応力とその可能性
・日常の裂け目をどのように受けいれていくのか
学校は危機になった時ほど、「元(日常の普通の生活)に戻ろうとする力」が強く働きます。
「なぜ元に戻ろう、いや戻そうとするのか」
子どもを遠ざけようとする、悟らせまいとする、大人側の「日常」を守るためです。子どもを守るのはなく、実は大人が自分たちを守るためなのかもしれません。

しかし子どもは、大人が戻そうとする非日常(日常の外側)の事象に対し、受け入れる感応力が高い。その高い感応力について、事故後の検証などでの、亡くなった「子どもになる経験」と「子どもと出会いなおす経験」の2つの経験からお話がありました。
感応力とは、科学では実証できない論理を超えた力であり、これが越境力です。
そして感応力を持つ子どもが、いかにして日常の裂け目を受けいれていくかについてもお話がありました。

● おわりに ~根をもつこと、越境者のまなざし
大人が果たす責任として、「いま・ここ」とは異なる世界(異なる価値観)があることを子どもに示すことであり、子どもの価値観をつぶさないことであると最後にお話がありました。
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そしてお話は終わり、今回の熟議の話題は次のように決まりました。
『 ほんとうの意味で「子どもを守ること」とは? 』
塾議は3つのグループに分かれて、約25分ずつの2回しました。
熟議では様々な意見がでました。
1回目では、「守るとはどのようなことを指すのか」「子どもの、いま・ここは何か」そして「死をなぜ子どもから遠ざけようするのか」と、3つのグループ共通することを熟議していました。
2回目の熟議で、「守る」のほんとうの意味を考えました。
塾議で出た話を最後に各グループからほぼ1分発表してもらい、共有し合いました。
“何から”、“何を”、“どのようにして”守るのかという発表や、また「守る」を別の言葉に置き換えるならなど、3班それぞれ興味深い意見でした。

クロージングの、『実は「守る」とは幻想でしかなく、子どもとどう向き合う姿勢を持っていくかが大人に実は問われている』というお話に誰もが共感し合い終わりました。
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石井さん、そして参加していただきました皆様ありがとうございました。
最後になりますが、来月で20回目を迎えます。多くの人に参加して頂き、感謝でいっぱいです、ありがとうございます。
多くのつながりが拡がりましたが、さらにつながりを拡げていきたいと思っています。参加して頂く人全員で楽しむ場を今後も届けていきたいと思いますので、是非今後とも参加をお待ちしております。お知り合いの方にも是非お声掛けをお願いします。

次回(5月16日(金)開催)は、ダイバーシティ研究所代表理事の田村太郎さんをお迎えします。(H.N)

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