雨の降る街角で、傘を振り回しながら歌って踊る映画「雨に唄えば(Singin’ in the Rain)」のワンシーンから始まった教育カフェ・マラソン。電動車椅子で、傘を差しながら牧口一二(まきぐち いちじ)さんが登場しました。
「車椅子に乗ると傘がさせるということが、自分にとっては大きな変化だった」というお話から始まりました。
何気なく「今日は雨かぁ…」とか「今日は晴れてよかったね」という会話がなされている日常では、雨はネガティブなものとされている。ところが雨がないと人は生きてはいけない、ということもまた周知のことです。
自分に障害がある方がいい、と思う人はなかなかいない。やはりマイナスのイメージがある。だけどそれは人間だから、プラスのことばかりではない、必ずどちらもあるものだ、ということでした。
最初の雨のたとえから考えると、「障害」もないと人間の世界は成り立たないということなのかもしれません。
このお話から、「障害者(と呼ばれる人)が1人もいなかったら」という問いが出ました。
また、映画で雨を目一杯楽しんでいる様子を見て、「障害を楽しもう!」と決めた、というお話も印象的でした。自分にある特徴を受け入れて楽しんでいくという姿勢という意味では、誰だって同じかもしれません。
後半では、カンニング竹山さんが脳性麻痺の方のヘルパー体験をする、という企画をテレビ番組の映像で見ました。その障害者の方は、わがままばかり言っていつもヘルパーさんを困らせているということでした。実際の場面でも、言いたい放題言っている感じでしたが、それに答える竹山さんも言いたいことをそのままぶつけている感じのやりとりでした。
実はその後の感想で、竹山さんから「初めて対等に接することができた障害者だった」という言葉があったそうです。
この場面には放送後にいろんな意見が寄せられたそうですが、牧口さん自身はとても肯定的に捉えていらっしゃるようでした。対等に遠慮なくものが言えるということは大事なことです。
このお話から、「障害者と、接する人との関わりについて」というテーマが出てきました。
こうして出てきた2つの問いやテーマをもとに熟議の時間へと移っていきました。
熟議の中では、それぞれが障害のある方と接してきた経験や、いろんな話を聞いて感じることなどを出し合いました。
「障害者が1人もいなかったら」という話では、そもそもそんなことは有り得ないという意見や、それでも何かしらの区別ができて同じようになる、という意見もありました。
障害のある方がいてくれるお陰で、助け合うような気持ちが芽生えたり強くなったり、それぞれの役割ができるようになったり、いろんな恩恵がある、というような話も出ていました。
人間がプラスだけでは成り立たないのなら、どちらも必要で、それぞれがお互いに補い合って存在しているのかもしれません。普段は意識することがなくても、そんな風に素敵なバランスが保たれているようです。
「障害者と、接する人との関わりについて」のテーマでも、前のテーマに続いて肯定的な意見が多く出ていました。中でも「対等」という言葉がポイントになっているように感じました。そうして対等に関わる中でそれぞれの特徴を尊重し合って接していくことで、深まるものがあったり、視野や世界が広がったりします。人間関係において、非常に大切なことを学ぶことができる関わり合いなのかもしれません。
最後に牧口さんは「ここに集まった人は意識が高い、という話がありましたが、意識が高い人ほど危険です」というお話もされていました。「考えてばかりで身体を使わないから」と。
実際にいろんなものに直接関わって向き合っていくこと、行動に移していくこと、形にしていくことの大切さも学ぶことができました。
もしかすると、人によっては普段はそれほど意識することのないような部分のお話だったかもしれません。だけど確実に存在していただいていて、だからこそ自分達もこうして元気に生きていけるのかもしれません。
そんな部分に思いを馳せることができた貴重な時間でした。
牧口さん、参加者の皆さん、本当にありがとうございました。
次回は11月21日(金)で、ゲストは小竹めぐみさん(NPO法人オトナノセナカ代表 フリーランス保育士)です。お楽しみに!