第79回教育カフェマラソン 永崎裕麻さん 旅幸家 英語学校カラーズ校長


2021年5月30日(日) 話題提供者:永崎裕麻さん

永崎さんはフィジー在住14年目で、英語学校「COLORS」の校長として、観光×教育という分野で事業を運営されています。日本から来た留学生は、英語以外にもフィジーのライフスタイルを学んでいくそうです。留学生からは「フィジー人はお金がないのに幸せそうなのはなぜ?」と聞かれることが多く、それを聞いたフィジーの人たちは逆に「日本人はお金がないと幸せになれないの?」と疑問に思うようで、永崎さんはそうしたフィジー人と日本人の価値観を橋渡しする役割を担っています。

著書「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」が出版されており、その他にもコミュニティや記事で南の島のライフスタイルや価値観について発信されています。※近々漫画版「南の島の脱力幸福論」が出版される予定

【過去何やってた?】

永崎さんは特にやりたいことがない学生時代を過ごしていたといいます。周囲がやりたいことに取り組む中で、自分自身は主体性がなかったそうです。やりたいことがないことはネガティブに聞こえるかもしれないけれど、一方で「時間がある」とも解釈することができるとも言われていました。

大学生のときには休学して、オーストラリアでファームステイをすることにしました。オーストラリアでは、出会う人たちに「enjoy your life」と声をかけられることが多く、そうした出会いや体験を通して「海外っておもろい」と感じたそうです。

大学を卒業後はサラリーマンをされていましたが、連休には海外旅行に行き、会社での仕事よりも旅をしているときの方が成長できると実感したそうです。そこから退職して、移住先を探すための世界一周の旅に出ます。移住先を探す基準は、住みやすい町ランキングよりも「自分にとって住みやすそうな町であるかどうか」。80か国を訪問するものの、魅力的な町は見つからず、改めて自分の住む町・大阪のよさも感じたそうです。

その後、「世界青年の船」に参加する機会があり、そこでフィジーとの出会いがありました。フィジーの人たちと知り合ったとき、「こんな幸せそうな人たちを見たことがない」という驚きがあったそうです。フィジーの人たちと暮らしたら幸せの近道なのではないかとの思いが沸いた永崎さんはフィジーに移住することにしました。

 

【フィジーの幸福度ランキング】

フィジーは世界幸福度ランキング(2016年2018年)で1位になっています。この世界幸福度は主観と客観から成り立ち、フィジーは主観性で最も高い数値を示しています。これは、「are you happy?」と聞かれたときに「yes」と答えた人の多さを表しています。客観性で示されているのは、平均寿命やGDP(国内総生産)、識字率や乳児死亡率などの数値です。

日本はこの客観性では高い基準を出していますが、主観性では「are you happy?」と聞かれたときに「yes」でも「no」でもなく「I don’t know」と答える人が多いとのことでした。これは他の人と比較して幸せかどうかを決めていることを表しているのではないかと言われていました。

その他にもフィジーでのエピソードとして、他人の成功を喜んでくれ、その成功で周りも幸せになれるという話がありました。日本では競争を強いられるなかで劣等感や優越感が生まれることがありますが、フィジーでは、「助ける・助けられる」という関係性があり、競うよりも自分が得意なことをするという考え方をするそうです。

他にも、不幸なときは笑った方がいい、ということを実践しているという話もありました。永崎さん自身、フィジーでは日常生活でもよく笑っているとのことでした。

 

【熟議テーマ① 幸せ=A×B】

グループセッションでの熟議テーマとして、永崎さんからは「幸せって何?」という問いかけがありました。自分にとっての幸せの構成要素を考えようということで、「幸せ=A×B」にあてはまる言葉をグループに分かれて話合いました。話し合う中で同じ言葉を2つ当てはめる人はいなく、それぞれの価値観について興味深い話をすることができました。

例えば、こんな意見が出ていました。

・健康×自立 ・お金×自由 ・つながり×孤独 ・自由×わくわく

他の人との話を通して、自分の考えをさらに深めることができたという感想もありました。

なかには、「幸せについて考えるといろんな条件にしばられてしまう、それにとらわれない幸福感をもちたい」という人に対して、畑仕事を通して土に触れているという中学生から「否定もされない、肯定もされないということを土から学んだ」という発言があり、その言葉によって他の参加者の考えを深めることもできました。

 

【熟議テーマ➁ 平々凡々な人生か、波乱万丈な人生か】

「わたしたちは本当に幸せになりたいのか」という投げかけがあり、今度は「幸せ保証のある平々凡々な人生か、幸せ保証のない波乱万丈か」の2択で話すことになりました。「幸せになりたい」とはよく言われるけれど、その「幸せ」とはどういうことか、自分にとって意味ある言葉に置きかえる必要があるのではないかという問いかけがあり、グループセッションがスタートしました。

話合いでは、「波乱万丈な人生の方がおもしろい」という人もいれば、「もちろん平々凡々な人生がいい」という人も。平々凡々に見える中にも波乱万丈はあるという意見もあり、その判断は人によって違うのではないか。また、幸せを求めすぎると倒れてしまうのではないか。幸せになりたいというよりも、死ぬときに後悔したくないというような意見も出ていました。

それぞれにいろんな人生を生きているからこそ、さまざまな視点での話合いをすることができました。また、今日出た答えがベストアンサーではなく、この考えも時とともに変わるということを永崎さんは話されていました。

 

最後に永崎さんからは、ショーン・エイカーの「幸せだから成功する」という言葉を紹介されました。幸せは目的ではなく手段であると考えられる。幸せとはガソリンのようなもの。たかが幸せと考えると、早く幸せという手段を手に入れて、次の方向に向かう方がいい。フィジーの人たちの考え方を紹介した上で、不幸でなければ幸せであるという捉え方を伝えられました。視野が広い人は幸せであり、ガソリン(幸せ)を集めやすいとも話されていました。

今回の教育カフェのテーマ「幸せってなんだろう」ということを考えたことがある人は多いと思いますが、永崎さんからいろいろなキーワードを提示してもらいながら、具体的に「幸せ」を自分の言葉で置き換えることで、改めて自分の価値観を考え直すことができました。(S.N)