第78回教育カフェマラソン 出路雅明さん(株式会社ヒューマンフォーラム 代表“戸締役”会長)


2021年3月5日(金)話題提供者:出路雅明さん

78回目の話題提供者はアパレル「spinns(スピンズ)」いきるをつくるをコンセプトにした「mumokuteki」などの事業を展開されている 株)ヒューマンフォーラム会長の出路雅明さん。youtube「でみっちゃんねる」も週に1度アップされています。

今回は創業や生い立ちも含めて話せたらという言葉で始まりました。

【出路さんや仲間のやっていること】

spinnsは、立ち上げて今は関わっていないけど、無人のお店やバーチャル上のアバターの服も売ってるし、高校も始めました。全日本高校SDGs選手権や、選挙に行こうぜ、みたいなこともやってる。朝活もいろんな先生がいろんな授業をやったり、韓国に進出したり、無農薬の農業もやっていて、震災が起これば必ず助けに行ったり…「なんだか知らん間に色々やって」るのだそうです。

印象的だったのはすごく自由でカラフルな生き生きさ。

高校の先生もファンキーでファッショナブルな格好で説明会をやっているのは、働くってこととか、大人って格好いいんだってことを見せているのだそうです。

「mumokutekiは衣食農業。「いきるをつくる」ってコンセプトで携わるすべての人と生き方をつくっていけたら」
そしてついに家の販売やリフォームも始め住にも進出するのだとか。最近は学びの会も多いそうです。

 

ヒューマンフォーラムよく勉強する会社だそうで、農業も、富士山登山も、自分たちで研修を作ったりもする。自分で学んで勝手に教え合っていくってのが流行ってるのだそうです。

 

【コロナの中、次のステージ創発経営へ】

「コロナ禍は本当にしんどかった。このまま続けばだめだな、と思っていたけど今何とか戻ってきたところ。」

しんどくても辞めたくないと思う人ばかり。
自由にやってみたらどうなるんだろう。
どっちみちつぶれそうならやってみよう。

そうやってヒューマンフォーラムは創発経営という次のステージに突入したのだそうです。


28年前はもともと、カリスマ経営(大家族経営)。
10年前、このままだと自分で考えて自分でできる人がいないと思い、エンパワーメント共創経営へ。はじめは変化が大変だったけど信頼関係をつくりながらやってきて、ようやくまとまってきたころ…
コロナがやってきたのだそうです。

その変化がなければある意味手放せなかったけれど、今は創発経営へ。

「これからの人はきっとこっちに向いていて、自分たちは冒険している。」
創発ってのは簡単に言うと、一見バラバラなのだけど、実は有機的にすべてがつながっていて思ってもいなかったようなものが生まれるということ。

「これができるのは本当に家族的な経営をやってきて長く一緒にやってきたから。ここに踏み込めたのは本当にコロナがあったから」

これはブロイラー→平飼い→放し飼いなんだという例を挙げておられました。

 

【でみっちゃん56年の足跡】

経営の話から突然出路さんご自身の歴史をたどる、濃いスライドに移り変わります。
度肝をぬかれつつワクワク。

 

①できるやん原体験

 

「幼稚園とか小学校、めちゃめちゃあほやったんです。どれくらいかというと学芸会でうんこたれるくらい。学校も嫌いで自分も嫌いやったのに大好きな先生と出会って自分のことが好きになり学校も好きになりました。」
人生を変えるのは人、本、出来事との出会い。良くも悪くも経験は人を変える。
4年生の時の先生が教え方がうまくて、その先生に好かれて勉強を頑張った。オール1から3,4,5に。今でのその先生は仏壇において手を合わせます。過去のお世話になった人はみんな仏壇においてあるのだそうです…!

2つ目の学び。1年から同じ先生だったのだけどその先生が苦手で、すごくつらかったのだけど、もしその先生と出会ってなかったら、自分のこと後ですごいな、と思わなかった。だから幼稚園の頃を入れた6年間くらいにも意味があるんだと大人になってから気づきました。
予習復習するときに「できるやん!」って喜びがあったなって思ったんです。できないと思ってた自分ができるやんって思うこと、その喜びを追い求めてた。人間の中にはみんなできなかったことを追い求めてできるようになっていく喜びっていうすごく大きな力があるんやって思ってる。だから社員みんなのなかに「できるやん!」って喜びがあるっていうのがあるのでそれを体験してほしい。

小さいとき貧乏で、父母がいっつもけんかしてた。つらかったけど、予習復習しているときはお父ちゃんが教えてくれてけんかにならない。もしかして俺お父ちゃんおかあちゃんに仲良くしてほしくて勉強してたんかな、という気付きもあった。この歳になってからそのころに戻ってみると大きな気づきがある。

 

②ブレークスルー原体験

 

中学の時父がサラ金で借金を抱え、その借金を肩代わりしてくれて高校に行けるようになったときにその反動でパンク少年になりました。中学の時から仕事をしていたけど、大好きな音楽に夢中になれた。鬱屈していた自分を解放した。
音楽やファッションやカルチャーの力を体感した。異次元に突き抜ける、解放される喜び。「本当に好きなことに夢中になっていいんだ」という喜びなのかもしれません。
この会社を通してやりたいことの一つ。みんな変容の喜びを体感できる会社でありたい。

ヒューマンフォーラムの想いに「素晴らしき仲間の集い」という言葉を掲げてらっしゃいます。感動・気づき・喜び・学びを分かち合うことが仕事というより人生の中で味わえると、ともに成長し互いに変容し一緒に楽しみ続ける。そんな仲間の集いで、辞めてもみんな仲がいい。新しくて面白いものを生み出していくんだ、ってことがあってそうすることで成長や変容が生まれる。自分の体験も全部社員に伝える。

「ファッションって生き方を変える、カルチャーや生き方を通して自分たちのやってることに誇りを持ちな、ぼくたちは僕たちの価値を生めばいいんだ」って言います。誇りをもつってことがどんな仕事にもある。

高校生から28歳まで働いていた会社ですごく出世しました。5店舗くらいだったのが5,60店舗に。その成長のプロセスを学ばせてもらった。自分も20店舗くらい見るように。できることが増えて、でも最後は傲慢になりました。やる気がなくなったり飽きてきたり。兄弟のような関係でやっていた人とも相手ができるようになっていくと仲が悪くなり、仕事もやる気がない。数人にでみっちゃんとは一緒にやりたくないと言われた。すごくけんかしたけど、自分は本当はとても傲慢だった。社長にかわいがってもらってたので半年くらいやめられなかったけど謝れなかった。逃げるように。もう二度とこんな思いはしたくない、というのが心の底にあって、ヒューマンフォーラム「素晴らしき仲間の集い」をつくりました。
だから大きな会社にしようと思っていなかったけど気づいたら人が増えていた。

「素晴らしき仲間の集い」は ええ一人一人のええ仕事から。
本当に大切なのは、一番の根底は素直さとか正直さとか笑い。サステナブルとかいろいろあるけど。心と技がワンセットにならないと成長しないし結果的にももうからない。

安心安全の関係性がうまれてはじめてクリエイティビティが生まれる。そうやってはじめてあんなわけのわからないこと自由なことが生まれる。そこまでの過程には悩んでるし、失敗もするし、そんなことを一緒にやりながら、でもやっぱり笑いだよねって言いながらやってる。

「いい人」にはならなくていい。嫉妬もするし、わがままも言うし、それも人間味があっていい。楽学塾っていう社員全員の塾がある。そこでは内観もして、自分を理解することからじっくりやっている。「ええやつ」になる。一緒に面白い価値を創ったりしている中で感動したりしながら育っていく。

坂本龍馬が成した中で一番大きなことは薩長同盟。当時強くてものすごくなか悪かった2つの藩。薩摩優位長州不利という中で西郷と桂の2人が相対した。
西郷は相手に応じて自分が動く、桂は不利な中で絶対に自分から同盟を、とは言えない立場。ずっとだまったまま2日がすぎ、喧嘩して帰る。竜馬がやっとやってきて、どうでしたかと西郷にきいた。竜馬は長州がかわいそうだとわんわん泣いた。どうしてあなたほどの人が同盟しましょと自分から言ってくれなかったんじゃ、桂さんがかわいそうじゃ。といった。その後西郷が同盟を進み出た。
この人間味、素直さ、正直さ。これを大事にしながらこういう在り様で接する中でみんなもそういう人になってもらえたらと思っている。

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ひと言ひと言が心に響いてじーんとしていたのですが、熟議テーマに移ろうとした時「テーマ決め忘れた!」と笑う出路さん。
参加している人にとって印象的だったことや生き生きしていることを聞いてみてから決めてみることに。

・できるやん体験ってのがすごく響いている
・大人になるといろんな制限をかけたりしていくことがあるけど、ここ最近あった子どもの時のような無邪気なワクワクする出来事をシェアするのはどうか。
・出路さん:子供の時の体験に戻るのは好き。子どものころお母さんに言えなくて布団の中で泣いていた。なんでそれを何度も思い出すんやろうと思うと、一人で泣いていたことを思い出すんやなと思った。最近気づいたのは、自分は甘えたかったんじゃなくて叫びたかったんやと気づいた。最近は家族が出かけたら叫んでる。
・ご自身の原体験を共有する。必ず経営者のセッションでもしてもらってる。

意見出しを経て決まったテーマはこちら。
「自分の原体験や、できるやん体験、無邪気になれるような体験をシェアする」

【熟議後のシェア】

K:小学校に入学して、ぼく泣き虫で、字も下手で。2年生の2学期に先生が交代して、クラス29人の全員のいいところを言っていたり、クラス全員100点やったりして、字も教えてもらってメリハリがあった。してはいけないことやしていいこといろんなことを教えてくれたという話をした。

P:原体験ってとこだと過去のやらかし、失敗、家族の面白エピソードで盛り上がった。なにかやらかしても受け止める、その人の人格を認めることでいつでもやり直せる。失敗があるほうが人間味があってなんだかんだいい思い出に。新しい発見だったのは、今自分が経験していることがいつかの原体験になるんじゃないかという視点。

M:つらいことが原体験になるのではという問いがあった。小さいころにいろんな人が集まるカオスな場で育っている人、その環境がつながっている。日常や環境も原体験になりうるんだな。安全基地なしにクリエイティビティを求められるつらさ。

N:話が深まった。原体験から創発と競争の違いまで。知り合いの原体験の話、メンバーの原体験の話。それを聞いて、じぶんのことを思っているときに話し合える仲間がいる、この安全安心な場をつくるってことを考えさせられた。言葉で消化できるものがあるんじゃないか。とにかく深まって、すごくいい話ができた。

【出路さんからのまとめ】

今回、会社の立ち上げや生い立ちのことをやったけど。いつも全く同じことは言わない。今回やってよかったと思ったことがあった。2日前の3月3日が誕生日で、今実は誕生日会ラッシュで。抱負とかきかれても、いつもお父ちゃんとお母ちゃんのことしか出てこない。この機会を頂いたおかげかな、って。
自分で愛がないなって思うんやけど、ぼくの愛の始まり方は、自分の言うことを聞いてくれない人にすごく関わっていく。関わってしまったら愛が始まっていくってのが。愛の反対は無関心という。憎しみって関心があるということ。一緒に仕事したら好きになるし腹も立つしそれをぼくは繰り返していくな。
その関わり方は自分の個性。デジタルで関わる人は違うかかわり方ができるしデジタルのおかげで世の中変わる。嘘をつけない時代が来るから。脳波も考えていることが分かるようになる。それができるまでには死にたい。でもそういう風になることで変化を加速させてくれる。それまではだまそうとするひと嘘をつく人などいてつらい思いをするかもしれないけど、それを乗り越えてありのままというような時代が来ると思う。

取り繕わない、そのままの人として対等に目の前の方と接されているお人柄がにじみ出ていたからか、私にとっては熟議もゆったりと深く感情にアクセスできる時間でした。(Y.N.)