今回は、コリア国際学園の事務局長で、元コリアNGOセンターの事務局長もされ、生野コリアタウンのまちづくりにも深くかかわられた宋悟さんを話題提供者にお招きしました。
はじめに、宋さんに40分ほど話題提供をしていただきました。
テーマは、コリア国際学園の建学の理念でもある「越境人とは?」
******************
「越境人」とは、境界をまたぐという意味。
この言葉は、どこかからとってきた言葉ではなく、目指す教育を考えていく上で出てきた言葉。
それを建学の精神にしたのはなぜか?
在日のコリアンたちは、歴史に翻弄され、3つの国家の狭間で生きてきた。
子どもたちの教育も、韓国、北朝鮮、日本とどこかの国家に属する形で行われてきた。
けれども、自分たちのアイデンティティを考えたときに、3つのうち、どちらの国家にも違和感がある。
そのために、国家に依拠した学校ではなく、自分たちで学校を創ろういうことになった。
在日コリアンは、歴史と政治の波の中で細分化され、周辺化されてきた。
ジグゾーパズルのピースのように線引きされて、自分たちだけでつながることを余儀なくされて生きてきた。
その痛みを知っているがゆえに、そうではなく、境界をまたいで人と人とをつないでいく存在として、次の世代に何かを残していきたい。
こういう発想が、この言葉に込められている。
また、在日コリアンの社会は、「ウリ=わたしたち」という意識が強い。日本の中で生きるために仕方のないことであっても、その中で「わたし=個人」が消されていることが多い。そのため、「越境人」という言葉には、「私=個人」として、問題を引き受け、外部とネットワークを作っていくという思いも込められている。
さらには、東アジアには、ヨーロッパに見られるような共同体がない。卒業生が国家間をつなぐ平和の架け橋になってほしいという思いも込められている。
今の時代は、予測可能な目標をなかなか立てることができず、正解がなかなかない時代。その中で、新しい付加価値をどう作り出していくかが求められている。そういうとき、創造性とはどこから生まれるのか? ザラザラした感覚、違和感から新しいものが生まれる時代だと思う。
いろんな境界をつないでいく、編集していく力、それをもっている人。それが越境人。
****************
宋さんの話題提供の後、3グループに分かれて、30分ずつ2回の熟議をしました。
「不安な気持ちが同質性を生んでいる。自己肯定感が高まればお互いの異質性を尊重できる」
「身近な人とも、同じ部分を探して安心するのではなく、違う部分に目をむけてみる」
「『同質性からは、新しいものは生まれない。』という言葉が印象に残った。」
などなど、いろんな意見がでました。
熟議の後、それぞれのグループかた発表してもらいました。
*****************
その後、宋さんからまとめの言葉をいただきました。
「もうだめだと思ったときから、始まることがある。」
「対話の空間をつくることが大切。しんどくても向き合っていく。」
難しいけど、一歩一歩、できるところから始めていきたいと思いました。 (M.F)