今回は、NPO法人女性と子どものエンパワメント関西の理事長の田上時子さんを話題提供者にお招きしました。
田上さんは、様々な方面で女性と子どものエンパワメントに活動されてこられ、多くの翻訳や執筆もされておられます。文部科学大臣より「平成22年度社会教育功労者」として表彰されておられます。
はじめの40分ほど、田上さんに話題提供をしていただきました。
最初に田上さんの活動の原点のお話から始まりました。子どもに「○○に気をつけなさい(してはダメです)」というのは、“できないから”という発想からの言葉。「子どもには力がありその力を引き出すことが教育である」ことを伝えることが大切であるとのこと。
そして、主に活動をされてきた3つの教育テーマについてお話いただきました。
『親教育』
親教育だけでなく、社会教育と併せた教育が必要であるとのこと。
今の社会情勢では、親だけでの教育は厳しく社会全体でいかにして子どもの力を引き出すことが大切であるというお話。
その話の中で、田上さんは「肯定語運動」をされているそうです。子どもに否定語(例:廊下を走るな)を言うと“走るな”の否定の「走る」という行動に移る。否定語で子どもに話をしても聞かないので、肯定語で子どもと話す運動だそうです。
『メディア・リテラシー教育』
今の時代、弱者を切り捨ている施策ばかり取られている。このことについてはっきりと訴えるメディアがいないこと、そしてメディアによく出る人の意見を疑いもなく鵜呑みにする人が多いことという問題提起をいただきました。
今のメディアを通して育つ子どもでいいのか?という視点から、メディアを読み解くリテラシー力こそ、これから必要であるとのお話。
『ジェンダー教育』
ジェンダーとは何かについて、性別をさすセックスと比較してのお話から始まりました。ジェンダーとは生まれつき持っているものとではなく、成長していく中で社会的や文化的な教育の中で育まれていく後天的なものである。ジェンダー問題を単に男女の性別問題で考えるのではなく、もう少し深い視点から考えるべきであるとのお話。
最後は、学校現場について、「先生の権利が守られていない学校で、子どもの権利が守られるのか?」でお話は終わりました。
田上さんからの話題提供後、3つのグループに分かれて、25分ずつ2回の熟議をしました。
テーマは、「どうすれば女性が社会進出できるのか? そして男女平等社会にするにはどうすればいいのか?」というジェンダー教育について熟議をしました。
各グループ、この難しいテーマについて、いろいろな意見が出ました。
「男女を分けるのはどうか?」「平等や社会進出とは?」「どのような社会を求めるのか?」など、参加者全員でテーマの奥にあることについて深く考えました。
熟議で出た話を最後に各グループほぼ1分で発表してもらい、共有をしました。3グループに共通する結論が、「男女ではなく一人ひとりを認めるような社会になればいい」。
クロージングとして田上さんからまとめの言葉をいただきました。
「男の子らしく、女の子らしくではなく、その子らしく生きていく社会になればいい」「私の体は誰のものでもない。私のものである」
この纏めの言葉は、熟議での結論に近いお話でした。
田上さんの求める社会と、参加者が語り合った社会が一緒になり、全員がひとつになれた時間を過ごせたと思いました。
田上さん、ありがとうございました。
次回5月の開催は、NPO法人D×Pの今井紀明さんをお迎えします。(H.N)