第83回 教育カフェ〜100回つづける対話マラソン〜 遠藤 まめた さん(一般社団法人にじーず代表)


教育カフェ~100回つづける対話マラソン~
第83回の話題提供者は、一般社団法人にじーず代表の遠藤まめたさんです。

まめたさんはLGBT(かもしれない人も含む)の人たちの居場所づくりをされており、講演や政策提言などの活動をされています。
今回は、どんな居場所づくりをされているのか、なぜそういった活動をするようになったのかなど、その時代の背景やご自身の経験を踏まえてお話ししていただきました。

◎にじーずとは
にじーずでは、10代から23歳までのLGBT(かもしれない人も含む)の人たちの居場所づくりをされています。
現在は全国6か所(札幌、埼玉、東京、京都、兵庫、岡山、四月からは新潟も)で、地域の青少年施設のユースセンターと共同で開催しています。
そこでは、
・みんな自由に過ごせて、本を読んでも、お話しても、何もしなくてもいい
・基本的には自由に過ごせるが、安全な場所にするために、毎回ルールを参加者全員で確認して開催をしている
・その日参加した子に話したいということがあれば、それを紙に書いてみんなで話をすることもある
ということでした。
対象にLGBT「かもしれない人」も含んでいるのは、まだはっきりと自分の性を自認していない状態では、特定の性自認の方だけで集まっているところには参加しにくいからだそうです。
LGBT(かもしれない)ということで悩んでいる人は、家でも、学校でも、自分のことを話しにくいので、居心地が悪いと感じている人も少なくなく、他に過ごせる場所が欲しいと思っている人は多いそうです。
そんな悩みをもっているユースの子たちの集まれる場所の必要性から、にじーずではこういった居場所作りをされています。

◎どのように活動が始まっていったのか
18歳の時から活動をしていて、今年で16年目になるそうです。
まめたさん自身は、性自認を高校生ぐらいの時に自覚したが、そのころの日本ではまだLGBTという言葉も全然浸透していない状況だったようです。
学校で習うこともなく、自分で調べて、自分で説明して、それでもわかってもらえない。
それはおかしいと思い、高校卒業と同時に、自分にできることはないかと考え、オフ会のようなものに参加するようになったそうです。
しかし、当時はグループがあっても参加者が一人しかいないなど、活動している人が本当に少なかったそうです。
活動している人が少なさから、逆にまめたさんがいろいろと頼まれるようになり、大学2年生くらいの時に初めて学生同士でLGBTの人たちで学生団体を作られました。
そこに参加するメンバーも、日頃自分をオープンにして話せる場所がなかったり、話してもわかってもらえなくて悔しい思いをしたりしている人が多く、長い時で1時から6時までずっと会議していたこともあったそうです。

◎活動と政治・教育
そういった経緯で活動を広げていく中、2013年ごろ、まめたさんは政策提言をされていたそうです。
日本の自殺者が年間3万人というのが10年くらい続いているような状況で、その中でLGBTを取り上げてもらおうとしていたそうです。
当時はLGBTに対してあまりいい考えを持っていない政治家たちもそれなりにいたそうですが、自殺対策に反対する政治家はいないということから、自殺対策として、LGBTの理解を広められるように働きかけていたそうです。

その少し前の2011年に「性的マイノリティ」という言葉が、その当時の『自殺総合対策大綱』のガイドラインの中に載り、教職員の無理解や偏見をなくすということが重要であると盛り込まれたそうです。
教育現場でこのことについて学ばなければならないという方向性が示されたのは、非常に画期的なことだったそうです。
まめたさんは、教科書にもきちんとLGBTのことを載せてほしいということも言い続けていたそうです。
・思春期になると異性が好きになると教科書に書いてある
・それでは、思春期に異性を好きにならない人のことは知らないままでいいということになる
・同性を好きかもしれないと思っている人はやっぱり自分がおかしいのかもしれないと思わせてしまう
そういったことが学習指導要領に書いてあるというのは、なにか間違っているのではないかと思い、2016年の学習指導要領の改訂に合わせて、「ぜひLGBTについて入れるべきだ」と政策提言をされたそうです。
ですが、残念ながらそこに載ることはありませんでした。

文科省は学習指導要領にLGBTについて載せられなかった理由を
・国民の理解がないから
・保護者の理解が得られないから
・先生が教えるスキルがないから
という3点をあげていたそうですが、これが非常に話題になって、それまでLGBTに興味がなかった人たちにも注目してもらえるようになったそうです。
今では教科書会社が自分たちの判断でLGBTについて載せるところも出てきているようです。
残念ながら、保健の教科書にはまだしっかりとは載っていないそうです。

◎にじーずのはじまり
そういった流れもあり、2015年くらいから先生向けの研修も増えてきて、それまでは抽象的な相談が多かったのが、そのあたりから目の前にそういった子がいるというような相談が増えてきたそうです。
相談を受ける中で、「安心して集まれれる場所があったら子どもたちをそこに紹介してくださいね」という話をしていたけれど、埼玉で話すときも千葉で話すときも神奈川にある場所を紹介していて、「自分で紹介しておきながら、千葉から神奈川までいくのは難しいんじゃないかな」とも思っていたそうです。
それくらいに当時は集まれる場所も少なく、そこに行くためにアルバイトをしている子もいたそうです。
そんな中、かつてアルバイトをしていた青少年施設から、LGBTの子たちの集まりをぜひやってほしいということで、にじーずが始まったそうです。
はじめたところ、部屋からあふれるほどにたくさんの人が来たそうで、急いで埼玉に2拠点目を作り、札幌でもやりたいという知り合いと作り、現在まで拠点を増やしてこられました。
それでも、「いつでもやってほしい」「自分の住むところからはにじーずに行けない」といったメールがたくさん届くそうです。

◎多様性を認めることはルールを変えること
学校で制服や髪型が性別によって決められていて、それがしんどくて学校へ行けない子がいるというお話も聞かせていただきました。
それは、学校がダメだとかそういった話ではなく、ルールのせいでつまずいている子がいるなら、多様性を尊重するなら新しいルールを作らないとどうしようもないということを指摘されていました。
ルールや仕組みが多様性を前提に作られていなかったということに気付いたなら、そこからどうすればいいか、知恵を出し合い考えていくことが大事だとおっしゃっていました。

今回は大変貴重なお話を聞かせていただきました。
互いを尊重し多様性を認め合える社会にしていくためには、ルールに当てはめるばかりではなく、見直し変えていくことが大切なのだと思いました。
とても考えさせられる、いい時間でした。
遠藤まめたさん、ありがとうございました!